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2010-09-23 00:00
(連載)コーラン焼き討ちで尖鋭化するオバマ・ディバイド(1)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
9・11テロ攻撃から9周年の記念日は、コーラン焼き討ちの騒ぎにみまわれた。それはバラク・オバマ大統領がグランド・ゼロ付近にモスク建設の計画を許可したことへの抗議である。確かに9・11攻撃によってアメリカ国民の間での反イスラム感情が高まったので、国民全体が惨事のトラウマからいまだ覚めやらぬ時期に、物議を醸すようなモスク建設の許可を与えたことは、政治的な誤りだった、と私は考える。
しかし、事態は、たんなる反イスラム感情の爆発を超えて、オバマ政権への不信感に根ざしている、と私は考える。ティー・パーティー運動に見られるように、グラスルーツの保守派はオバマ大統領の経済および健康保険政策によって市民生活への政府の介入が「過剰」になると批判している。保守派の勢いは、ティー・パーティー運動がなくても、強まっているのだ。
『USAトゥデー』紙とギャラップ社が最近行なった世論調査によれば、民主党員の59%、共和党員の55%、無党派層の50%が「オバマ政権の成立によって共和党は保守化した」と答えたということである。人種やイデオロギーの壁を超えた国民の団結を訴えた有名な演説を行なったオバマ氏が大統領に就任したことで、アメリカの分裂が深まるとはなんとも皮肉である。コーラン焼き討ちとティー・パーティー運動は「オバマ・ディバイド」の氷山の一角に過ぎない。
ジョン・ミクルスウェイト氏とエイドリアン・ウールドリッジ氏がその共著で述べているように「ヨーロッパの福祉国家と違い、アメリカという国は“Right Nation” である」。アメリカにおける保守派の運動には根強いものがある。両著者は、イギリス人としての立場からアメリカとヨーロッパの保守派の政治基盤を比較し「アメリカの保守派は、グラスルーツのネットワークとしても、権威のあるシンクタンクとしても、ヨーロッパの保守派よりはるかに強い基盤を築いている」と述べている。バラク・オバマ氏はそうした“Right Nation”とは水と油のような存在なのである。(つづく)
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