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2010-09-22 00:00
(連載)中国天津での国際シンポジウムに出席して(1)
池尾 愛子
早稲田大学教授
「東アジア・モデルと地域発展:世界金融危機における再思考」と題するテーマの国際シンポジウムが、9月10-12日に南開大学日本研究院主催・国際交流基金後援により天津市内で開催された。同研究院主催の会議には昨年9月にも出席したので多少なりとも心に余裕はあったが、発表者の顔ぶれは大きく変わり、昨年の会議の雰囲気とはかなり異なっていた。私が参加したセッションについて簡単に紹介しておこう。11日の最初の基調発表は、中国社会科学院国際研究学部主任の張蕴岭(Zhang Yunling)氏の「東アジア区域合作を如何に認識し、推進するのか」であった。張氏は知名度の高い国際経済学者であるとともに、会議後の翌13日に天津で開催された夏のダボス会議の組織にも関わっているとのことであった。
そして、韓国柳韓大学学長の金泳镐氏の発表「世界金融危機下の東アジア地域統合とポスト・チェンマイ・イニシアティブ」が続いた。金氏の「東アジアでの軍備縮小、不戦共同体、非核共同体、信頼共同体の構築」の提案は、大きな関心を引いていた。会議全体では、地域自由貿易協定(FTA)締結が論点の1つになり、世界銀行レポート『東アジアの奇跡』(1993)が注目されたが、それ以前(1970-80年代)については、故小島清氏が赤松要理論を元にして拡張した雁行形態型発展論を応用して、海外直接投資が東アジア地域の経済発展をもたらしたと分析する発表がいくつかあった。
サブプライムローンに端を発する金融危機の影響は、日本や東アジアでは少ないとはいえ、日本経済に元気が足りないとする発表が目立つ一方で、金融協力や金融ビジネスを通しての日本への関心は高かった。日本人による発表のなかに、国際通貨基金(IMF)や経済開発協力機構(OECD)、経済財政白書や労働白書の経済データを駆使したものがあり、それは中国の若手研究者にとってよい手本になると思われた。実際のところ、データの利用、事実の確認、経済史・金融史への注視は、東アジアの社会科学においても、共同研究を可能にし、議論を噛み合ったものにすることであろう。
清華大学国際問題研究所副所長の劉江永氏は、訪日経験を重ね、日本でもよく知られている。劉氏の発表テーマは「アメリカ金融危機後の日本の反省と模索」で、彼の今回の語り口は、彼が日本で発表するときのトーンとかなり異なっていたのが気にかかった。彼のいう『新保守主義』は難解だが、『新自由主義』はアメリカの経済学者ミルトン・フリードマンの思想に基礎をおくものとして捉えられ、このあたりでは共通理解に立てそうである。論争的な『新保守主義』を切り離せるならば、『新自由主義』は中国では嫌われてはいないようなので、私も後者の用語は使うことにした。セッション終了後、若手研究者たちが彼のサインを求めて行列する様子から、彼の中国国内での絶大な人気ぶりがうかがえた。劉氏が合間に海外の研究者たちと意見を交換し、翌日の分科会セッションに出席していたことは記しておこう。(つづく)
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