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2010-09-13 00:00
(連載)米国のアジア回帰を歓迎する (1)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
9月8日に米国のクリントン国務長官が、ワシントンにある著名なシンクタンクである外交評議会(CFR)において、今後の米国の外交方針全般を論じる長大な講演を行なった。この演説は極めて重要かつ歓迎すべきものである。
しかし、残念ながら、日本国内でのとり上げられ方は余りにも軽い。報道で最も目立ったのは、クリントン長官がアジア太平洋における米国の重要な同盟国を列挙する際に、従来の慣例である「日韓豪」の順ではなく「韓日豪」の順で列挙したとか、これは日本の「格下げ」を意味する、といったものであった。確かにそういう意図はあったのかもしれないが、クリントン講演の重要性はそんなところにあるわけではない。
それでは、我が国にとってクリントン講演のどこが重要なのかと言えば、それは、米国のアジア回帰を明確にした点においてである。ブッシュ政権末期からオバマ政権発足時にかけて、米国の外交戦略はアジア軽視が著しかった。ブッシュ政権はイラクにばかり関心が行き、オバマ政権はアフガンと米露リセットにばかり関心が行っていた。オバマ大統領自身は、現在でもアジアにさほど関心があるようには見えないが、それを補って余りあるのが、クリントン国務長官であり、ゲーツ国防長官である。
クリントン国務長官は7月にもASEAN地域フォーラム(ARF)の閣僚会合で、「南シナ海の自由な航行は米国の国益であり、南シナ海における領有権問題で多国間協議を支持する」と明言して、「南シナ海は核心的利益である」と位置付ける中国を強く牽制した。さらに、8月には、米国とベトナムが合同軍事演習を行なうまでに至っている。この一連の動きだけでも、米国のアジア回帰が確実であることは十分伝わってくるが、クリントン講演には、だめ押しをするという意味がある。クリントン長官は、CRFでの講演の中のアジア太平洋に触れた部分で、「オバマ政権発足時には米国がアジアにおいて不在であると認識されていた。そこで、まず我々は、韓国・日本・豪州といった緊密な関係にある同盟国との絆を再確認し、中国やインドへの関与を深化させてきた」と宣言している。(つづく)
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