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2010-09-11 00:00
(連載)金正日の中国訪問と中朝関係(2)
茂田 宏
元在イスラエル大使
中国側の発表のよれば、胡錦濤は「中国は、過去30年間ゆるぎなく経済開発という中心的課題に固執し、すべての面で社会主義近代化を推し進め、人民の生活を確保・改善するために改革・開放を進めてきた。経済開発は自分に頼ることを要求するが、外部世界との協力なしには達成しえない。これは国の発展を加速化するために、この時代では不可避の道である。中国側は北朝鮮が安定を維持し、経済を発展させ、人民の生活を改善するためにとっている積極的な措置を尊重し、支持する」と述べたとされている。他方、金正日については「中国は、改革と外部世界への開放を始めて以来、すべての分野で強い活力で急速に発展した。この歴史的プロセスの証人は中国共産党と中国政府の指導と政策の正しさを証明している。北朝鮮はいま経済の発展と人民の生活の改善に焦点を合わせている」と述べたとされている。
他方、北朝鮮側の発表によれば、胡錦濤は「社会主義発展の方向性維持と朝鮮の同志が朝鮮の具体的条件に適した開発の道を探索している努力において、北朝鮮の党と人民への支持を表明する。北朝鮮は、金正日の指導のもとで間違いなく強盛大国を建設する上で全党と国が勤勉に働き、新たな成功を収めると信ずる」と述べたとされている。「北朝鮮の具体的条件に適した開発の道」が強調されているが、改革開放への言及はない。なお、先軍路線への言及は、中朝いずれの発表文にもない。
今回の金正日訪中で、中朝は緊密な関係をお互いに大切にしており、特に中国は北朝鮮を自分の勢力圏内に取り込む努力を強めていることが明らかである。中国は朝鮮戦争で多大の犠牲で北朝鮮を守り抜いた。その後、北朝鮮は自主独立の姿勢を見せることもあったが、現状では、中国に頼らざるを得ない。中朝関係はいまでは中国優位の切っても切れない特別な関係、衛星国的関係にあると考えるべきであろう。中国は天安沈没事件で、北朝鮮を徹底的に擁護する姿勢をとったし、米韓合同演習に反対する姿勢をとっているが、これはそういう中朝関係を反映している。いまでも中国は朝鮮戦争は米国の侵略であったとの見解を変えていない。
したがって、中国が北朝鮮に核問題などで日米韓が望むような圧力をかけることは期待できるとは考えないほうが良いと思われる。中国は、北朝鮮が経済的に困窮すればするほど、かつ北朝鮮と日米韓との関係が悪化すればするほど、北朝鮮への影響力を増大させることになろう。その影響力が北東アジアでの情勢の改善に資するかどうかについては、中国は、日米韓は地政学的には対抗する相手であると考えている嫌いがあり、期待できないと思われる。たとえば、北朝鮮が内部崩壊を起こしたような場合、中国は米韓の介入を排除することに最大の力点を置くと思われる。(おわり)
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