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2010-08-31 00:00
トロイカ復活は権力闘争先送りに他ならない
杉浦 正章
政治評論家
拳銃に一発だけ弾丸を装填し、自分の頭に向け引き金を引く、決闘のロシアン・ルーレットが恐ろしくなって、両方が天井を撃った形だ。菅直人は代表選敗北が怖く、小沢一郎は「首相就任」が嫌だ。何よりまして、両者とも「党分裂・政権下野」を回避したい。紛れもない“密室談合”だが、ロシアン・ルーレットは1度天井を撃つと、大体ゲームが終了するという。きょう菅・小沢会談が開かれるが、会談は小沢が降りることを前提にしなければ、開催する意味がない。一転して小沢出馬見送りのの見方が強まっているのはそのためだ。
鳩山のトロイカ復帰を菅が呑んで、突然の「トロイカ宣言」だ。トロイカ体制は旧ソ連でスターリン死後に権力闘争回避策として出て来たものだが、権力の二重構造の象徴にほかならない。結局党の権力が強くなり、共産党第1書記のフルシチョフが権力を握って、トロイカは崩壊した。要するに、民主党の今回のトロイカ体制復活も、結局は権力闘争の先送りを意味するものにほかならない。菅は「脱小沢」を事実上転換し、挙党態勢の名の下に人事上の譲歩を迫られることになる。その意味で、菅は小沢に屈服したことにもなる。しかし小沢が降りれば、代表選は事実上の信任投票か、跳ね上がりが立候補しても、菅の独走態勢を確保出来る。小沢が降りれば、菅にとってもめでたしめでたしだが、譲歩なしには小沢との会談を8月31日に設定することは不可能だったはずだから、既に譲歩したか、または譲歩するに違いない。
焦点は、幹事長と官房長官の人事であろう。またトロイカという以上、小沢、鳩山をどう処遇するかも焦点だ。加えて、菅が「トロイカに輿石さんを加えて体制の原点を大事にしたい」と、あえて参院議員会長・輿石東を加えた点も、興味深い。菅陣営にしてみれば首相のポスト確保が最優先の順位であり、幹事長や官房長官ポストのために戦っているわけではない。「脱小沢」のスジ論とは別に、政治論としては両ポストに固執するのは愚策だ。現に幹事長・枝野幸男は参院選大敗後いったん辞表を出したというし、官房長官・仙谷由人も「おれがやめればいいのなら、いつでも首を差し出す」と漏らしているという。しかし、菅にしてみれば、小沢を幹事長に復活させるとなれば、味方と世論の挟撃を受けて、立ち往生だ。したがって、小沢の息がかかってはいるが、ぎらつかない候補がいるかどうかだ。朝日新聞だけが報じているが、政調会長・玄葉光一郎が30日夕、菅に「輿石幹事長でもいいじゃないですか」と進言、菅は納得した表情であったという。その後玄葉は輿石に接触している。この動きは面白いが、まだ成否は不明だ。
党名とは逆の「密室での談合」が世間に与える印象は悪く、菅の「脱小沢」路線転換にもつながるだけに、菅もマスコミに叩かれることは覚悟しなければなるまい。「政治とカネ」が挙党一致でほおかむりになることも紛れない。支持率低下は避けられない。菅にしてみれば、小沢との激突となれば必ず勝つという自信がない上に、勝っても負けても党分裂・政権下野の危機にさらされる。小沢にしてみれば勝って首相になっても、野党の攻撃にあって解散・総選挙に追い込まれるのは火を見るより明らかだ。「小沢首相」では、民主党大敗が保証されているようなものだ。こうした事情を背景に、菅・小沢会談が設定されたが、人事上の取引が焦点になるものの、外部にはなかなか公表できまい。しかし勢いずく小沢陣営をなだめるためには、抽象的ではあっても、代表選後の人事に言及した合意の形を取ることが予想される。最後の詰めが残っており、菅・小沢会談の成り行きはもちろん断定できるものではない。
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