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2010-08-30 00:00
定年制廃止が高齢化問題解決の鍵
湯下 博之
杏林大学客員教授
8月8日付けの読売新聞が報ずるところによると、英国政府は、2011年4月から民間企業の定年制を廃止する方針案を明らかにしたという。半年間の移行期間を設けたうえで、同年10月から完全実施するという。高齢化社会に対応するのが狙いで、産業界は強く反発しているが、実施は確実な情勢だという。
英国人は、一般に保守的と思われている反面、進取の気風も有しており、世界史を振り返って見ても、世界をリードすることとなる新しい試みに次々と成功してきた。高齢化の問題は、英国のみならず、21世紀の世界で多くの国々が直面する問題であり、日本でも種々論じられている。だが、客観的には、日本こそ高齢化の先端を走っており、この問題に本気で取り組んで行動を起こさないと、社会の仕組みが機能しなくなることがはっきりしているのに、そのような取組みは一向になされていない。
私は、2007年3月に「少子高齢化問題を考えなおそう」と題し、また、今年1月末に「日本を健全な長寿社会のモデルにしよう」と題して、この「議論百出」欄に卑見を提出したが、今回の英国の動きを見て、日本こそ定年制廃止に真剣に取り組むことが必要と考える。その理由は、詳しくは上記の二つの卑見をご参照いただきたいが、高齢者(長寿者)が元気で生き甲斐を感じながら生活するためにも、日本社会を活性化させるためにも、年金制度その他の社会保障制度を機能させるためにも、高齢者が働き続けられる社会的仕組みを作ることが不可欠だからである。
定年制を廃止するといっても、高齢者が若い人達と同じように残業もして働くということではなく、また、いつ迄もポストを占めて若い人の昇進のさまたげになるということでもなく、例えば60歳を境に働き方や待遇を分ける等、現実を踏まえたリーゾナブルな仕組みを作り出すことが大切である。そういう具体的な方法論を国を挙げて議論し、検討することを提案したい。
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