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2010-08-27 00:00
小沢一郎氏の「アメリカ人は単細胞」発言について
島 M. ゆうこ
エッセイスト
8月25日に小沢一郎氏が「アメリカ人は単細胞で、単純思考の国民なのか」という意味の発言をした12時間後に、アメリカの多くのメディアはその発言を一斉に報道した。「アメリカ国民に対する軽蔑なのか、それとも単なる軽はずみな発言なのか、小沢氏の本意は、具体的に掴めない」というのが、アメリカのメディアの共通する印象のようだ。発言の内容については、いずれもほぼ同じ記事を報道をしており、小沢氏の発言を翻訳して引用している。
『ワシントン・ポスト』紙を例にあげると、「私はアメリカ人は好きだが、彼等は単細胞のようだ」と述べ、また「アメリカ人と話をするとき、しばしばアメリカ人は、なぜこんなに単純思考なのだろうかと思う」と述べている。『CBSニュース』は、小沢氏が「アメリカ人は非常に頭が良いとは思わないが、国の民主性と歴史上初の黒人大統領を選んだ人々に、最大の評価を与える」と述べたと伝えている。この報道は、1986年、当時の首相であった中曽根康弘氏が「アメリカにはヒスパニック系が多い為、知的水準が低い」と発言したことから、日米間に大きな支障が生じ、結局、中曽根氏が謝罪する結果になった歴史を思い起こさせる。
日本の著名な指導者がアメリカ国民に対する一般的な印象や意見を述べると、アメリカのマスコミは日本のマスコミより敏感に、しかも迅速に報道する傾向があるため、慎重であるべきだ。また、アメリカのマスコミは、このような発言の真意を憶測する傾向があるため、具体性と説得力に欠けるコメントは、誤解を生む結果になるだけで、プラスにはならない。そのことを中曽根氏の例から学ぶべきだ。事実『ワシントン・ポスト』紙は、小沢氏が使ったと思われる「単細胞」という表現について、英語で “monocellular organisms”と翻訳しており、これは「近視眼的であるとか、馬鹿、などの意味にも使われる」と解釈している。
当然この小沢氏の発言に対して、アメリカ国民から様々な反響が寄せられた。中でも、『ハッチントン・ポスト』紙には4000以上のコメントが寄せられ、他紙のコメントなども合わせると、総体的には大半の投稿者は怒っており、日本に対する皮肉な意見もあった。しかし、小沢氏の意見に同意する意見も若干あったことには、驚きを感じた。同意を示した意見の例には、現在の情報化時代の風潮について、それが原因となっているアメリカ人の「単細胞的」傾向について考えさせられる意見もあった。例えば、ある有名なニュース番組は「単にニュースを報じるだけではなく、どのように考えるべきかも国民に伝えており、素早い情報の流れについていけず、現実に起きていることを理解することが益々難しくなってきている一般の国民にとって、理解しやすい表現で国民をガイドする、このような番組をあえて好んで見る人たちは、事象を簡単な表現で理解できればいいと思っているからだ」と述べている。
事実アメリカには、正統派のニュース番組と言うより、エンターテイメント化した報道番組も存在し、ブラック・ジョークがいつのまにか、真実であるように信じられてしまうという、驚くべき現象がある。例えば、ハワイで生まれたオバマ大統領に対して「オバマはアメリカ国民ではない」など。また、現在起きているグラウンド・ゼロにおけるモスク建設の論争についても、オバマ氏が憲法に基き信仰の自由を保障する旨の声明を行うと、本人は正真正銘のキリスト教信者であるにも関わらず、そのような番組に影響された国民が「オバマはイスラム教信者である」と真剣に思いこんでしまう。これでは、「単細胞的だ」と言われても仕方がない。一つの情報だけに頼らず、あらゆる情報を吟味して、一体どの情報が正しく、どの情報が間違っているのか分析する知的探究心に欠け、近視眼的であるという意味では、大半のアメリカ国民が「単純化思考」傾向になっている現実を無視できない。反日感情を煽るような小沢氏の公的発言は支持できないが、氏のアメリカ国民に対する知覚力に対しては、完全には否定できないものがあると言える。
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