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2010-07-29 00:00
(連載)オバマ外交で脆弱化する世界の安全保障(1)
河村 洋
親米・国際介入主義NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
今年の11月に控えた中間選挙を考慮すれば、オバマ政権の外交政策をどのように評価するかは重要である。就任からほどなく、バラク・オバマ大統領はカイロとプラハで物議を醸すような演説を行ない、イスラム世界に対する寛容、過去の力の外交への謝罪、そして「核なき世界」実現への決意を印象づけた。また、オバマ氏はロシアと中国との関係もリセットしようとしている。ブッシュ政権のカウボーイ外交を非難した勢力は、プラハとカイロの演説には平伏礼賛であった。しかし、私は、アメリカ外交を謝罪し、権威主義国家の台頭を受容するオバマ氏の態度を批判し続けてきた。よってオバマ政権の外交政策の方向性を見定め、それがこれまでの政権のものとはどれほど違うか、を検証することが重要に成ってくる。
今年の1月14日にBBCラジオでキャスターを務めるロビン・ラスティグ氏の司会する「オバマ政権下のアメリカ外交」をテーマにした討論会が、カーネギー国際平和財団で開催された。このイベントでは、アメリカ外交で何が変わり、何が変わらないのかが検証されたが、リベラル派のアメリカ外交政策専門家であるカーネギー国際平和財団のジェシカ・マシューズ所長は、ブッシュ政権のイラク戦争にも、レジーム・チェンジ政策にも批判的であった。また「民主化促進という用語が、軍事介入の恐怖感をかき立ててしまい、アメリカの理念の正当性を低下させた」と嘆いた。マシューズ氏は、オバマ政権の組閣で国務長官と国家安全保障担当補佐官の候補にも挙げられていただけに、オバマ外交を称賛しても何ら不思議ではない。実際にマシューズ氏は、「オバマ政権は、ブッシュ政権が残した全世界に広がるアメリカへの不信感を払拭しなければならない」と主張する論文を書いているほどである。マシューズ氏は「オバマ氏は、プラハ演説とカイロ演説、イランへのノルーズ(ペルシア暦の旧正月)・メッセージによって、アメリカのイメージを大きく改善した」と述べている。
私は、アメリカの課題が多様化し、多国間の取り組みが必要なことには同意するが、ヘリテージ財団のナイル・ガーディナー氏が述べているように、オバマ氏は、権威主義国家のナショナリストや世界各地の極左勢力を宥めるために、アメリカがやること、なすことをすべて謝罪すべきなのだろうか? マシューズ氏は、世界各地でのアメリカのイメージに関する世論調査に言及しているが、世論調査には憎しみのイデオロギーを信奉する勢力の声も含まれ、彼らは自由のイデオロギーを信ずる者達に対して本質的に相容れない敵対勢力である。
このイベントで私を驚かせたのは、カーター政権で国家安全保障担当補佐官を務めたズビネフ・ブレジンスキー氏のオーディオ・コメントである。オバマ氏に魅了されてしまったブレジンスキー氏は、「ブッシュ政権の外交政策によって傷つけられたアメリカのイメージを改善したというだけでも、オバマ氏はノーベル平和賞に値する」と言う。この発言は、まるでドン・キホーテのようである。『ワシントン・ポスト』紙のリベラル派コラムニストのルース・マーカス氏でさえ、受賞のニュースには驚愕したほどだというのにである。普段のドン・キホーテは、理性と熟慮の人物だが、騎士道精神に関わる事柄になると、完全に夢想的な人格に変わってしまう。冷徹な理性の人であるブレジンスキー氏も、オバマ氏に関することになると、このように人格が変わってしまうのだろうか。(つづく)
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