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2010-07-14 00:00
(連載)教室内のラップトップ禁止は時代に逆流か?(1)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
アメリカの大学では10年前から、教室内でのワイヤレス・インターネットのアクセスが大分普及するようになったが、今その逆の現象が起きている。最近、アメリカ各地の大学の教室ではラップトップ使用を禁止する教授が増えてきているのだ。この傾向は2006年頃から既に始まっていたが、最近になってその傾向が顕著になってきた為、マスコミでも注目されるようになった。特に、ここ数年手軽な値段で登場した小型のラップトップ・コンピューターは軽量でどこにでも持ち運べるため、大学のキャンパスでは、数年前から大学の講義をノートにメモする代わりに、ラップトップにタイプする学生が増えている。しかし、実際は授業中に学校のワイヤレス・インターネットを利用して、授業に無関係の情報検索をしたり、オンライン・ショッピングやEメールに没頭し、クラスに出席しながら、授業を要領よくサボっている学生が増えている、という意外な現実がうきぼりになっている。
特に、判例に関するクラス・ディスカッションを重視するメンフィス大学、ペンシルベニア大学、ジョージタウン大学などでは、法科の学生にこのような問題が多いため、教室内でのラップトップ使用禁止が続出している。『ワシントン・ポスト』によると、バージニア大学、ウイリアム&メリー・カレッジ大学、ジョージ・ワシントン大学、コロラド大学、アメリカン大学などの伝統的な大学も、授業中のラップトップ使用を禁止している。アメリカでは、大学の授業は自己研鑽の一部に過ぎないと考える学生も多く、生徒の成績の良し悪しにさほど関心を持たない教育者が多い現状で、ラップトップが教育の現場に及ぼす影響に目を向け始めた教育者が増えてきたことは、その動機に関係なく注目に値する。
教室でのラップトップ普及の結果、教授が質問しても、その質問を聞き返すなど、明らかに人の話しを聞いていない生徒が増えたことや、成績低下などの支障が懸念されるようになり、これがラップトップ使用禁止の主な原因になっているようである。もちろんラップトップを使用する学生の中には、講義を真面目に聞きながらタイプしている学生もいるため、「ラップトップ禁止は独断的で、権威的である」として、反発する学生もいる。彼等にとってラップトップが生活の一部になっているため、大学の教育現場では一種の混乱が生じているようだ。
法律関連書の著者でもあるジョージタウン大学の法律の教授ディビット・コールは、すでに2008年に授業中のラップトップ使用を禁止したが、その理由を「ラップトップにタイプする作業は、講義をそのまま転写するだけで、速記方法に集中するあまり、クラス討議でお互いに情報交換する過程を阻害する」と述べている。「従来のペンを使ってノートに書く作業は、コンピューターにタイプするよりはるかにスロー・テンポになるが、実際に聞くことにより、講義の重要なテーマが何であるか考える力を学生に養成することが可能である」と述べている。つまり、ラップトップ入力の方法では、人間の思考力にもマイナスの影響があるということである。また、コール教授は、全面的に禁止せず、交代で毎回2名の生徒に講義のタイプを許可し、その記録は他のクラスメート全員も利用できるシステムを採用している。彼の講義に学生が集中できるようになることをねらった巧みな対処法であるといえる。(つづく)
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