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2010-07-12 00:00
「G8」と「G20」の役割分担を考えよう
河村 洋
親米・国際介入主義NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
2008年の洞爺湖サミット以来、サミットは、設立当時のフランスのバレリー・ジスカールデスタン大統領による基本理念からかけ離れてしまったのではないか、と私は疑問を抱いてきた。本来のサミットは、主要先進民主主義国の首脳が官僚の介入なしに自由な討論を行なう会議であった。現在では、サミットは巨大化し過ぎてしまい、会議の準備と治安に膨大な金額と人員が費やされている。全世界の左翼からの厳しい批判を受けて、サミットはG8からG20に拡大し、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカの新興諸国も参加するようになった。しかし私は、拡大したサミットでは拘束力のある共通の合意に達することは難しいと懸念している。また、大規模な国際会議は、開催都市に大きな負担を強いることになる。現在のサミットには、南の国々も参加するようになったが、それでも左翼の暴虐行為は止まず、開催都市の住民は暴力の脅威にさらされている。
よって、サミットは、より一貫性があり、より効率的で、小規模なものにする必要がある。今年の6月に開催されたムスコカG8サミットとトロントG20サミットの最中に、カナダのジャーナリストのジェームズ・トラバース氏は『トロント・スター』紙で「G20は、単なる国際経済協調のための会議を超えて、世界の安全保障を主導してゆくべきだ」と述べている。トラバース氏が述べているように、「テロ、気候変動、貧困、金融危機といった21世紀の問題により多くの国が参加する必要がある」ことは、確かである。G20の方がG8よりも世界経済の運営で正当性を訴えやすいからである。しかし、それはまた、サミットの拡大が必ずしも質の向上につながらないことも意味する。
トロント大学G8リサーチ・センターのエラ・ココティス氏は、6月25日放映のロシア・トゥデーのインタビューに応じ「G8とG20の間には役割分担がある」と述べている。「G8は、北朝鮮やイランでの核拡散のような政治的安全保障、アフリカ開発、気候変動の議論の場だ」という。他方で、「G20は世界経済のあり方を模索する場だ」という。金融危機以来の世界経済の運営には新興諸国の参加も必要かも知れない。ただし、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスの故スーザン・ストレンジ名誉教授の理論を適用すれば、新興諸国には自分達の要求を他国に受け入れさせる「関係的な力」はあっても、多様化し複雑化するグローバルな問題に対処する「構造的な力」はない。新興国には世界政治の体制作りのために自分達の影響力を行使する能力はない。
拡大したサミットは、毎年行なわれる「サミットのためのサミット」になりかねない。サミットをより一貫性があり、より効率的で、小規模なものにするためには、毎年開催されるサミットはG7ないしG8にとどめ、G20は必要に応じて(アド・ホックに)開催すればよい、と思われる。ここでG7と言ったのは、アメリカのジョン・マケイン上院議員とジョセフ・リーバーマン上院議員が主張するように、ロシアのG8加盟資格には疑問の余地があるからである。ともかく、サミットの小規模化よって開催都市の負担と会議への官僚の介入は減らされるだろう。参加国を拡大しても、限定しても、左翼の不平分子が不満を訴えることに変わりはない。
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