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2010-07-07 00:00
小沢は菅政権に「協力する」のか「対立する」のか?
杉浦正章
政治評論家
永田町やマスコミから9月の民主党代表選挙で前幹事長・小沢一郎が首相・菅直人に対抗して立つとの見方が出ているが、果たして本当か。理由は、民主党が菅の提起した消費税論議の末に過半数割れとなれば、“政局師”小沢が見逃すはずがないというのだ。しかし、この見方は、小沢政治の基本を計算に入れていない。代表選に勝てば、小沢が一番嫌いな「首相」になってしまうということなのだ。逆説になるが、真実だ。ダミーを立てることはあっても、本人が立つことはまずあるまい。参院選挙後の政治日程だが、“逃げ菅”を象徴して、臨時国会は月末に3日程度の短期で済ます方向のようだ。長期の臨時国会を開催して、国民新党に義理立てをして郵政改革法案などを通している余裕はなくなるからだ。長期国会をすぐに開けば、小沢を刺激して、政局になりかねないのである。菅は、長期の臨時国会は、9月末の民主党代表選挙を終えてからにしたい考えのようだ。選挙過半数割れの場合に備えて、クーリング期間を置こうという考えのようだ。
そこで、小沢がどう出るかだが、「小沢さんが一兵卒と言うときが、一番怖い」と民主党幹部が漏らしている。自由党党首だった小沢が民主党と合併したときに述べたのが、「合併後はポストを求めず、一兵卒として政権交代にがんばる」だ。その後民主党代表・菅は代表選で小沢に負けて、ひさしを貸して、母屋を取られた形となった。今回も、小沢は「一兵卒として頑張りたい。田舎の山や寂れた港町で静かに応援したい」と述べているが、これが怪しいというのだ。みんなの党代表・渡辺喜美は「この選挙が終わったら、恐らく民主党は消費税をめぐって、小沢だ、反小沢だ、と党内抗争になるのは、目に見えている」と「乱」を予想している。
たしかに一連の小沢発言は、選挙後の「政局化」への布石とも受け取れる。当選目標も60議席と高く設定、消費税増税反対、マニフェスト修正反対を公言。遊説日程も執行部のスケジュールには全く関与せず、独自の戦いを展開している。選挙後に菅批判で動く、と見てもおかしくない姿勢だ。民主党内には「50議席を割れば、小沢さんは動くが、割らなければ、本気ではやるまい」と40議席台への落ち込みがカギになるとの見方も出ている。政局化となれば、9月末の代表選挙が照準となるが、筆者は小沢本人は立つまいとみる。
なぜなら、第一の理由がこれまで数々の首相になる機会を自ら回避してきており、今回もその環境は変わっていないからだ。国会答弁の体力、「政治とカネ」の追及を考慮すれば、「なりたくない」の気持ちは変わるまい。小沢を強制起訴し得る検察審議会の動向も気にしており、7月5日、東京第5検察審査会に「冷静に判断すれば、政治家本人の刑事責任を問うような事案ではない」とする上申書を提出、けん制の動きを早くも開始している。検審が万に一にも「不起訴妥当」の結論を出せば勢いづくが、ここで万に一つの問題を云々するつもりはない。ただ小沢は、存在感を誇示するために代表選に候補を立てる可能性は否定できまい。海江田万里や原口一博を立てて、陣営をまとめる動きはあり得る。しかし消費税増税やむなしの世論は、政権4か月で首相・菅直人を代えるような動きには同調しないだろう。小沢は6日「私は批判しているんじゃない。本来、政権党や政府与党は『こうあらねばならない』という当たり前のことを言っているだけだ」と和戦両様とも受け取れる発言をしている。小沢が結局は菅に協力するのか、党分裂にも直結しかねない対立路線を選択するのか、判断は極めて難しい局面だ。まだ選挙結果が定かでなく、方程式が多すぎる状況だからだ。
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