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2010-07-05 00:00
イギリスの総選挙が日米に与える教訓
河村 洋
親米NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
今年の5月に行なわれたイギリスの総選挙は、アメリカと日本という自由資本主義の二大経済大国に対し、いくつかの教訓を与えている。アメリカは今年の11月に中間選挙を控え、保守派の市民達はティーパーティー運動に見られるように、「社会主義」のオバマ政権に対して辛辣な反撃を行なっている。日本では、7月に参議院選挙が行なわれ、経済では消費税と景気対策、安全保障では普天間基地問題などが争点になっている。非常に興味深いことに、先のイギリスの総選挙では、どの政党も下院議席の過半数に達しなかった。これはどの政党も有権者の気持ちをつかめなかったことを意味する。アメリカと日本はこの選挙からどのような教訓を得るべきだろうか?
アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・バロン常任フェローは、今年の11月に行なわれるアメリカの中間選挙に向けて数点の教訓を指摘している。バロン氏は、「最も重要なことだが、過大な財政支出をする政府は、有権者の支持を得られない。ブラウン首相の労働党政府は、ブレア政権の第三の道から離れて左傾化してしまった。また、自由民主党への国民の支持が投票日を前にして低下したのは、ニック・クレッグ氏が不法移民の合法化やユーロ加入によるポンド・スターリングの廃止のような非現実的な政策を主張したためである。選挙の動向を左右したのは、政策課題の主張だけではない。政治家への不信感が高まる時期には、古くからの政治手法は通用しないことがある。従来からの世論の政党支持の揺れ戻しのパターンに基づけば、デービッド・キャメロン氏の保守党はもっと多くの議席を獲得してもおかしくなかった。このことは、有権者とウエストミンスターのインサイダー達とは見解が食い違っていたことを示している」と述べている。
バロン氏は、上記のような教訓の他に、「イギリスとアメリカの政治的周期は、レーガン・サッチャー関係やクリントン・ブレア関係のようなイデオロギー・コンビに見られるように、相互関係がある」とも記している。バロン氏が最後に挙げた教訓は、日本にとって非常に重要になってくる。自民党と民主党の優位の崩壊による急激な変化が予測されるにもかかわらず、古い政党も、新しい政党も、古くからの手法によって来る選挙で有権者の関心を引きつけようとしている。殆どの政党がテレビ・タレントやスポーツ選手などの「軽くてパー」な候補者を擁立し、彼らの人気を利用して票を得ようとしているからである。
日本の政治指導者達が1980年代から政治改革を模索するうえで、イギリスを憲政の模範としてきたことを考慮すれば、かれらが上記の点を理解していないことは、皮肉としか言いようがない。バロン氏が述べるような政治的周期を考えれば、アメリカの有権者はイギリスの選挙の教訓を有効活用するであろう。しかし、日本では尊敬に値する候補者を発掘できる体制が確立されておらず、いまだに「軽くてパー」な候補者の人気に依存するという、「昭和元禄」の選挙戦術がはびこっている。これでは日本政治の刷新は、絶望的に長い時間を要するであろう。
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