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2010-07-04 00:00
注目されるティ-パーティ運動の実態と今後
島 M. ゆうこ
エッセイスト
7月4日がアメリカ国民にとって最も大事な歴史的記念日であることは、日本の皆様もご存知の通りである。1776年のこの日、アメリカ東部の13の英領植民地が「自分達の政治は自分達で担う」と決意し、英国王ジョージ三世に謀反を起こすことを決意した重大な日である。これにさかのぼる約2年半年前に起こったボストン・ティーパーティという謀反は、結果的にアメリカ独立の一端に貢献したことになる。現代版ティーパーティのメンバーは、彼らの地域から自分達の声を代弁してくれる議員を支持し、11月の中間選挙に勝利することで、「国を自らの手に取り戻す」謀反をおこそうとしている。
7月1日サウス・キャロライナ州の共和党上院議員リンジィ・グレィアムは、「ティーパーティ運動はいずれ消滅する」と予測したことで、メンバーは怒っているようだ。ティーパーティに対する最近のマスコミが伝える共通したイメージは、一貫した政治改革案を掲げた正統派の集団というより、むしろ冷静さや論理性に欠けた「謀反的態度」及び「単なる怒り又は不安を抱いている集団」として強調されるようになってきている。しかし、彼らの「謀反的態度」は無視できない。最近のティーパーティ運動のスローガンである「国 (又は政府)を我々の手に取り戻す」が全国的に浸透してきたようだ。オバマ政権発足直後に台頭したティーパーティ運動は「政府の権限が憲法の枠内以上に大きくなっている」と主張している。
アメリカ政府の権限が最大限に拡大したのは、実際は第二次大戦後のことである。近年で言えば、ジョージW.ブッシュの政権下でさえ、その権限は非常に大きかったが、なぜ、突然オバマ政権になって「大きな政府に反対」とオオムのように繰りかえし叫ぶティーパーティのようなグループが出現したのだろうか?歴史的に、アメリカ国民は「自由」を切望しており、基本的には政府の規制に縛られない政治を理想としている。しかし、第二次大戦後から冷戦時代を通して政府の権限は益々大きくなる傾向にあり、その権限が腐敗したものであったため、アメリカ国民は第二次大戦後ほとんど政府に対する信頼を失っているのが現実である。冷戦時代軍事費は膨大し、ケネディ及びジョンソン政権下でベトナム戦争における莫大な出費と高騰する税金に失望し、ニクソン政権下で、押し込み、盗聴、選挙運動違反、及びスパイ行為で有名になったウォーターゲート事件、レーガン政権下ではイランで軍事器材の販売から得た利益をニカラグワの反逆者グループに投資したふたつの違法工作として知られるイラン・コントラ事件、ブッシュ政権下のテロ対策としてペイトリオット法成立後のプライバシーの侵害などに立腹したように、アメリカ国民は政府に背を向け続けている。
このように1960年代から「政府の権限が憲法の枠内以上に大きくなっている」政治を、歴史学者は「インペリアル・プレジデンシィ」と呼ぶが、なぜ、オバマ政権だけが「大きな政府」に対する反発のターゲットになっているのか?この隠れたなぞを公然と分析し、「オバマが黒人だからだ」という旨の発言を最初にしたのは元大統領ジミー・カーターである。しかし、オバマ大統領はその可能性を否定し、「政策に不満があるからだ」としている。ティーパーティ運動は第二次大戦後の趨勢となった「大きな政府」に対する「謀反」なのか、それとも、カーターが暗示したように、オバマ個人に向けられたものなのか、なぞである。また、グレィアムが予測した通り、ティーパーティ運動は自然消滅するのか、ボストン・ティーパーティのように「謀反」に成功し、「国を彼らの手に取り戻す」ことができるのか、今後の動きが注目される。
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