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2010-06-28 00:00
まじめで現実的な消費税論議を評価しよう
湯下 博之
杏林大学客員教授
7月11日投開票予定の参院選が迫って来た。昨年の衆院選による歴史的な政権交代が、国民の期待に反して、非生産的な政治混迷に終始してしまったことを考えると、今回の参院選は、その帰趨はもとより、政党や選挙民のとる態度といった選挙のあり様も、日本の民主主義の成長の文脈で、大きな意味を持つものと考えられる。
各党が掲げる選挙公約についても、単なる選挙目当てのスローガンや観念論ではなく、実現可能性が考慮されなければならない。また、普天間基地移設問題が如実に示したように、特定の問題を全体像や国の進むべき方向等から切り離して論ずることも危険である。単に選挙に勝つためだけではなく、選挙後にどう実現するかを考えた公約が必要である。今回の参院選での公約をめぐる各党の主張で特に注目されるものに、消費税の問題がある。私は、二大主要政党である民主党と自民党が、消費税増額で足並みを揃えたことは、画期的なことであると思う。
なぜなら、日本の財政が破綻状態にあり、社会保障制度が危機に瀕していることは、何年も前から明らかであったにもかかわらず、これ迄は消費税の導入や増額を掲げた政党は必ず選挙で敗退し、今やこの問題はタブーのようになってしまっていた。しかし、それでは、財政破綻や社会保障制度の危機の問題を解決できず、日本はずるずると泥舟化して沈んでしまう。勿論、消費税を増額すれば、それで問題が解決するといった簡単な問題ではない。何よりも経済成長を図ることが必要であり、経済成長や社会保障制度改革のロードマップと併せ、消費税を引き上げるということである。また、生活必需品の減税や低所得者対策を含めることは、諸外国もしており、当然のことである。
現在は景気が冷え込んでいるので増税の話をすべきでないとの議論もおかしい。今増税するという話ではない。日本の破局を避けるための方策を今検討し始め、条件が整った段階で実施しようという話である。選挙目当ての無責任な言論は退けられ、将来を見通したまじめな現実的な議論が評価されるようになることを願ってやまない。
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