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2010-06-23 00:00
北朝鮮による威嚇
茂田 宏
元在イスラエル大使
6月12日、北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は、韓国による対北朝鮮宣伝放送用の拡声器設置などの動きについて、「我々への直接的な宣戦布告であり、これらを跡形もなく消すため、全面的な軍事行動に入る」との「重大布告」を発表した。さらに「わが方の軍事的対応は反逆者グループの牙城であるソウルの火の海まで見越した無慈悲な軍事的攻撃であることを肝に銘じるべきである」と警告した。
ソウルを火の海にするとの威嚇は、私が韓国に勤務していた1993年頃、北朝鮮が行ったことがある。今回の北の反応は、北がこういう心理作戦に大きな危惧を持っていることの裏返しであり、国内統制への自信のなさの現われかもしれない。金正日の悪口を言われるのが耐え難いのかもしれない。
韓国側は対北拡声器宣伝を行うとしており、拡声器設置を進めているが、まだ放送には踏み切っていない。今回の北朝鮮の威嚇は具体的なものである。先の地方統一選で与党が負けたことを受け、北朝鮮が韓国側の世論が対北強硬路線に否定的である、威嚇が効くと考えていると思われる。威嚇が具体的であるだけに、韓国側としても、どうするのか、対応が難しい。北にしても、韓国側が拡声器放送を実施した場合、どうするか、難しいだろう。北朝鮮は、これは宣戦布告である、ソウルを火の海にする、としている。こういう北の言辞は法的に言うと問題がある。
第1:朝鮮戦争はいまだ終わっていない。平和協定は出来ていない。休戦協定があるだけであり、法的には戦争状態にある。したがって法的には宣戦布告などいずれにせよ、ありえない。韓国は、休戦協定締結時の指導者、李承晩の意向もあり、休戦協定当事国になっていない。ただし有事の指揮権は米にある。
第2:北朝鮮は国連憲章第2条4項に違反している。国連憲章第2条4項は「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を・・(中略)つつしまなければならない」と規定している。北朝鮮も韓国も国連加盟国である。今回の北の威嚇はまさに武力による威嚇である。
北は、安保理に天安事件に関連した被害者としての申し入れをするなど、外交的対応措置もとっているが、国連憲章の最重要規定に違反しているのであって、国際社会の好意的反応は望みがたいであろう。「相打ち」に持っていくことを考えているのであろうが、こういう布告を出すことはその目的のためには逆効果になるだろう。
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