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2010-06-22 00:00
激減する日本人の海外留学生
岩國 哲人
前 衆議院議員
バージニア大学は200年の歴史を誇り、全米で最も美しいキャンパスをもつ言われています。建築家として知られた米国第3代大統領トーマス・ジェファーソンが、精魂を傾けて、彼のふるさとにつくりあげた大学だからです。日本からの留学生が絶えないのは、その建物やキャンパスの美しさに憧れる学生がいるからだという説さえあります。古き良き時代のアメリカを象徴する大学の町シャーロッツ・ビルを客員教授として訪れるとき、私の胸もときめきをおぼえるのです。一方、中国の名門大学の一つの南開大学は、周恩来総理の出身校として知られ、政界、官界、外交官に優秀な人材を送り出しています。
米国・中国へ留学する日本の学生は、このような一流の大学で学び、自分の国を外国から眺めることによって、日本の異質性、優越性、劣等性などを自分の目と頭でくっきりととらえる絶好の機会を持つことができます。クラスの中で日本人学生の顔を見ながら、その学生たちに向かって、「ガンバレ、ガンバレ、負けるなよ」と心の中で声をかけながら、そして私の講義にどういうような反応を示すのか、地元の学生とは違う反応が出てくるのか、それを見るのも授業中の私の秘かな楽しみでありました。しかし、「これは、ちょっとどうかな」と思わせられたこともありました。あるときの南開大学での合同講義。私の担当の政治学部の学生だけでなく、法学部、経済学部、社会学部の学生も加わって、約300人の学生が大ホールの中で熱心に聞いていました。
質問タイムに入ると、「なぜ、いつも決まったようにワシントンの声明と全く同じ内容が、日本政府の声明として翌日発表されているのか」、「平和憲法と言いながら、なぜ世界第二位の防衛予算なのか」、「日本の憲法理念や外交方針と一致していない、問題ありと批判されている教科書を、なぜ地方の教育委員会の自由な選択に任せているのか」などなど、鋭い質問が飛びだしたあとで、日本人女学生の手が上りました。「私は名古屋出身で南開大学に留学に来ました。私は何を勉強したらよいのでしょうか」。特別に聴講許可を得て、そのホールに着席していた私に同行していた日本の方や、現地日本系企業幹部の方々にとって、唖然とさせられた強烈な質問でした。
これは10年前のできごとで、最近はこういう質問は無くなりました。近年は日本の学生そのものが消えて、日本人らしい顔を見つけて話かけてみると、中国出身であったり、韓国出身であったりすることがしょっちゅうです。日本から出かける留学生の数が年々減少しているという憂慮すべき事実が、内外の大学関係者から指摘されています。中国、インド、韓国等が着実に海外での留学生を増加させて、世界のキャンパスでの存在感を高めているのに対して、日本は全く手を拱いて、企業に、親元に余裕がないことに結びつけているだけです。もっと深刻な問題は、国際社会での学力競争に自信をなくし、挑戦する姿勢を失いつつあることです。日本の若い世代に問題があるのではないでしょうか。この点にこそ政治が果たすべき役割があるのではないだろうかと、去る5月、文部科学大臣にお会いして、私は三つの具体的提案をお渡しした。
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