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2010-06-16 00:00
参院選の焦点は、民主党の「過半数60議席」達成の有無
杉浦 正章
政治評論家
「逃げ菅」批判をものともせず、国会は6月16日に閉幕し、野党党首は早くも15日から街頭に立ち、政局は事実上参院選挙に突入した。「小・鳩辞任」を契機に、民主党が政策で自民党寄りともいえる現実・柔軟路線にかじを切った結果、争点のあいまい化が顕著となtった。勢い参院選挙は、菅直人政権の「信任投票」的な色彩を帯びる形となった。政権発足早々で勢いづく民主党が有利な状況にあり、焦点は参院で単独過半数に届くかどうかに絞られよう。憤まんやるかたない野党党首の気持ちは分かるが、問題は「逃げ菅」批判が票に結びつくかどうかだ。
街頭演説に立った 自民党総裁・谷垣禎一は「表紙だけを変え、何をやるかもはっきりさせない選挙至上主義だ」と批判。公明党代表・山口那津男も「予算委員会を開いたら、野党から追及されて支持率が下がる。だから逃げろ、という意図」と図星をついた。しかし菅は「テレビとかいろんな場があるから、私が出なきゃならないときは出る」と、野党との討論の場を“テレビ討論”に移すと宣言。国会は「軽視」されたことになるが、有権者の目から見れば、これは“逃げ”とは映るまい。問題は、菅の現実・柔軟路線へのかじ切りと「小・鳩辞任」で、争点が喪失状態になりつつあることだ。「政治とカネ」について菅は「辞任でケリ」の一点張りだが、野党の説明責任要求も国会閉幕で訴求効果があせている。
政権追及の最大テーマであった普天間移転問題は、菅が日米合意踏襲を表明して、辺野古移設を表明、自民党も自らの案を批判するわけにもいかない。悪名高きマニフェストも、菅は修正マニフェストを掲げて参院選を戦う方針であり、既にマニフェストにあった「在日米軍基地のあり方について見直しの方向で臨む」との部分を削除してしまった。消費税についても、自民党が10%への増税を掲げているのに対し、民主党もマニフェストに「消費税を含めた税制の抜本改革」を掲げ、超党派の論議を呼びかける方針である。与野党が消費税を掲げて選挙に突入するかってないケースであり、争点にはなりにくい。
こうして民主党の思惑通り、ポスターにワイシャツ姿で登場した菅を支持するかどうかに事実上の焦点が移りつつある。昨年の総選挙で鳩山のポピュリズムの欺瞞(ぎまん)性を国民が理解しないまま、民主党が圧勝した“2匹目のドジョウ”狙いだ。「刷新」のイメージ選挙で、逃げ切る構えだ。これに再び乗ろうとしている有権者も“優しい”が、背後に自民党政権への不信感がまだ抜けないのだから、有権者が「次善の策」を取らざるを得ないのも無理あるまい。菅は、6月15日、選挙予想について「現有議席をクリアできるかが一つの大きな目標だ」と述べ、「当選時の議席(50)」としてきた目標を54議席に変更したが、これは自信の表れだろう。恐らく焦点は、過半数の60議席を達成できるかどうかにかかってきたともいえる。鳩山末期は最低29議席が予想されただけに、潮目は変わった。上げ潮に乗って60議席前後の議席を獲得した場合、菅政権は先に書いたように長期政権化する可能性が出てくるだろう。
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