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2010-06-15 00:00
(連載)メキシコ湾原油流出事件に伴うアメリカ国民の苛立ち(2)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
最も不安と苛立ちを感じているのは、経済被害を受けた人達であるが、彼らに対する補償問題も明確にされていないことは、ご承知の通りである。被害者の生活を何よりも先に守るべきであるが、これも対応が遅れている。その原因には、幾つかの複雑な連邦政府の法的問題が考えられる。司法省は先週、民事及び刑事法の両側面からBPの原油掘削装備に違反がなかったのか、また、関与したトランスオーシャン、ハリバートンの2社も、同様に環境法に違反がなかったのか、を徹底調査するとの発表を行っている。一つの事故に複数の被害者が伴う民事及び刑事訴訟は、プロセスに時間がかかるため、被害者に対する補償問題の解決は更に長引く結果になる。
又、最近になって、原油流出が改善しないことから被害が拡大しているため、連邦政府の法律で定められている経済的補償義務の限度額引き上げについて、共和党と民主党議員の間で論議されるようになった。その背景には、最も有力な非営利ビジネス団体であるアメリカの商工会議所 (USCC)が最近、現行の経済義務限度額に関する法律に見切りをつけ、「全員が犠牲になるべきである」というような意味不明の発言をした為である。現行の連邦政府法は経済的義務限度額を7500万ドルと定めているが、複数の議員が100億ドルに増額することを要求している。これに対し、法的義務額を100億ドルにすると、小企業は到底対応出来ないとする反対意見もある。
BPのケースにおいては、同社が清掃費用と経済的損害を全額負担した場合、その合計額は連邦政府が定める現在の限度額では到底おぼつかないことは、容易に予想できる。BPは、非常に曖昧な表現で、「法的に妥当な補償義務額の支払」をする意志があることを公的に発表しているが、無限に支払うとは言明していない。大半の共和党議員は、BPの合計補償義務額をアメリカ政府がBPと分担するべきだと考えているようである。「BPは倒産してでも、すべての経済義務を履行すべきである」とのBPに対する怒りの声もあるが、ビジネスを重要視する共和党議員は、「環境への安全基準を明確にしていないのに、海底原油堀削を許可したアメリカ政府にも責任がある」と主張しているようである。
爆破時に行方不明となった11名の遺体はいまだに確認されていないが、爆発による死亡が推定されているため、この補償義務に関しても、論争の主なターゲットになっているのは、経済的に最も有力なBPであるようだ。しかし、BPはイギリスで3番目に大きな多国籍企業であり、教師の年金ファンド株を多く保持する会社でもあるため、倒産に追い込んだ場合のイギリスでの波紋は大きいと予想される。また、BPに厳しい対応をすると、イギリスとの外交関係にも支障が生じると懸念している議員もいるようである。USCCの発言やこのような議員の論争に際し、一般的な国民感情としては、BPの倒産やイギリスとの外交関係などは、どうでもいいのである。しかし、政府にも責任があるとなると、被害者に対する経済的補償は増税という形で国民に白羽の矢が向けられる、として苛立っているというわけである。今週、4回目の現地訪問を予定しているオバマ大統領は、透明性のある方法でBPに個人及び団体への損害賠償を支払うよう要求する意図があるようだ。(おわり)
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