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2010-06-14 00:00
(連載)メキシコ湾原油流出事件に伴うアメリカ国民の苛立ち(1)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
今、アメリカは大きなフラストレーションを抱えている。メキシコ湾で起きた爆発及び原油流出事件がこれほどまでアメリカ国民を苛立たせる結果になるとは、50日前には誰にも想像できなかったことである。その原因は、一貫性のない情報が氾濫しすぎていること、環境破壊が今後どのように人々の生活に悪影響を与えるのかが不明であること、経済被害を受けた人達への補償が明確にされていないこと、連邦政府の法的・経済的な義務限度額が論点になっていること、この論争に伴い国民への増税につながる結果が懸念されることなど、苛立つことばかりが多く、明確な指針が示されていないからである。
まず、情報の氾濫についてであるが、毎日のように伝えられる原油漏れの量は、一体どの情報が正解なのか不明である。沿岸警備隊、ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)社、様々な環境グループ、コンピューター・プログラムを利用した学者グループ、その他の組織を含め多数の情報筋からの推測が、飛び交っているからだ。BPは、6月3日には海底部で漏れが生じた部分のパイプを切り、キャップを被せることに成功したが、その切断部分がぎざきざ状だったため、完全に密封できない状態で、未だに流出の勢いが弱まっている気配がない。つまり、巨大バサミを使ったこの原油漏れ封じ込み作戦は失敗したわけである。
その後の流出量の推定にも大きな差があり、一体どの情報が正確なのか、誰も理解していない。また、漏れた原油は一体どこに流れていくのか、いつまで続くのか、台風が原油流出にどのような悪影響を及ぼすのか、現在のところ明確に答えることが出来る専門家はいない。一般のアメリカ人は、正確な原油漏れ量に関心を持っている訳ではないが、BPは、推定量を頻繁に変更し、情報が毎日氾濫している割には、様々な点で明確な展望性がないという点が問題なのである。油まみれになった海鳥やほかの海洋動物に同情が集まる一方で、深刻な環境問題が今後人間の健康にどのような影響を及ぼすのか、未知数の不安もある。
事故の当初は、原油漏れの回収を容易にするため、海面上に浮いた原油を燃やしたり、化学スプレーして原油を固める作業も行われたが、いずれも効果はなかった。これまで何度も海面上に流出している原油が空から確認されているが、小塊状となった原油はどこに放出するのか、あるいは深海底に残留するのか、明白にされていない。これでは、単に海鳥やほかの海洋動物を含めた環境破壊のみを意味するのではなく、海洋エコ・システムのサイクルと人間の食となる海産物も含めた総合的なフード・チェーンに更なる重大な結果が伴うことが懸念されるのである。もちろん、1989年のエクソン・ヴァルディーズの事故後、アメリカ合衆国環境保護委員会(EPA) は様々な環境安全基準を設定してきたし、海底原油掘削の安全基準が全く無かったわけではないが、この事件ほど、アメリカ国民にその安全基準がずさんであることを思い知らした出来事はない。(つづく)
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