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2010-06-10 00:00
「争点喪失」で「信任投票」の色彩強める参院選
杉浦 正章
政治評論家
フランス革命で急進派が処刑にされて、革命路線が定着したように、民主党の改革路線は「小・鳩体制」の崩壊にともなう“穏健派”の台頭で、様変わりの様相となった。普天間・消費税などの重要政策課題で、一種の「民主党の自民党化」ともいえる現象が生じている。これは参院選挙に向けて鮮明な対立軸が失われつつあることを物語っており、選挙は菅新政権の信任投票の意味合いを濃くしている。まさに野党、とりわけ自民党にとって最悪のコースとなりつつある。
「いずれ化けの皮は、はがれる」とみんなの党代表・渡辺喜美が述べているが、選挙前には無理だろう。しかし、選挙後では意味がない。民主党内で「会期は延長せず、7月11日に投票」論が強まっており、これはあきらかに「臭いものにふた」の「あら隠し選挙」を目指したものだ。6月10日付新聞各紙の世論調査でも、内閣支持率は朝日が60%、読売が64%と「ご祝儀支持率」の様相を強めている。投票先も朝日が民主39%,自民13%、読売が民主36%、自民13%と倍以上のリードとなっている。郵政改革法案の強行採決を避けて、早期に国会を閉幕しようとする戦略は、この支持率活用の一点に尽きる。
加えて、争点は、首相・菅直人や閣僚の記者会見を聞いても、ぼけ始めている。最大の焦点普天間問題は、自民党政権当時の日米合意の復活そのものだ。自民党がその無策ぶりを指摘しても、辺野古埋め立てそのものを批判することはできない。消費税率引き上げ問題も、菅は総選挙後の導入路線と言ってもよく、後任の財務相・野田佳彦も「社会保障の財源として、当然消費税が出てくる」と述べるに至っている。前首相・鳩山由紀夫が導入を頭から否定していた路線とは、様変わりだ。公約の1丁目1番地である子ども手当も、全額支給はしない方向だ。
このような重要施策での方向転換は、菅の憶面もない「官僚への擦り寄り」路線も加わって、「小・鳩体制」とは様変わりの柔軟路線である。冒頭述べたように、フランス革命は、急進派ジャコバン党の恐怖政治の先頭をきったダントンとロベスピエールが処刑されて、市民革命が定着した。それと同様に、「小・鳩」除去が、当初の民主党政権の行きすぎ是正のきっかけとなりつつある。これはとりもなおさず、自民党政権との大同小異を印象付ける結果となった。おそらく有権者は先鋭化した民主党より、穏健化の民主党にほっとする感情を抱くに違いない。
菅は、本能的にこの傾向を感じ取り、記者会見でも「ぼかし」と自らの売り込みに徹したに違いない。その効果が、一時は10%台にまで落ちた内閣支持率を復活させた側面が、濃厚だ。争点喪失の代わりに、参院選は新政権を信任するかどうかの人気投票的な色彩が濃厚となってきた。そのためには「国論の分かれる郵政改革法案の強行採決は避け、このまま早期選挙に突入するしかない」と思っているのではないか。いずれにせよ菅の最終決断となる。自民党など野党は、争点喪失への対応を迫られる結果となった。
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