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2010-05-25 00:00
(連載)タイの政治の今後(2)
茂田 宏
元在イスラエル大使
アビシット首相は4月10日の治安部隊とデモ隊との衝突後辞職を望んだが、タイの旧支配層がそれを許さなかったと聞いた。その真偽は確かめようもないが、4月10日の衝突では25名もの死者が出ており、1960年の安保騒動で樺美智子さんがなくなった際のショックを思い出すと、首相辞任があったとしてもおかしくない事態であったとは言える。5月14日から20日までの死者も53名に上っている。アビシット首相が今後、国民和解を成し遂げられるのか、大きな疑問がある。
そもそも2006年9月、軍がクーデタでタクシン政権を倒した後、2007年5月には司法当局がタイ愛国党の解党処分と党幹部の5年間の政治活動禁止を命じた。しかしその後の2007年12月の選挙でもタイ愛国党主流派は国民の力党に移籍し、国民の力党が第1党の座の確保に成功した。それで出来たサマク政権を2008年9月、憲法裁判所はサマク首相のテレビでの料理番組出演は違憲であるとの理由で同首相を失職させた。そのあと、ソムチャイ政権が出来たが、黄色シャツ(PAD)のデモがあり、また、同年12月には、憲法裁判所は国民の力党を選挙違反を理由に解党処分とした。その後、国民の力党の一部と連立与党がアビシット民主党党首を支持し、その結果、出来たのがいまのアビシット政権である。
選挙で勝ったタクシン派を既成勢力の側があらゆる手段を用いて排除しようとしてきたのは明らかであり、アビシット政権に正統性がないという赤シャツ側の主張にはそれなりの根拠がある。タイはこのような社会の大きな亀裂を抱えており、そのまま今後安定していくとは思われない。選挙をしても、問題の解決にはならないという意見もあるが、選挙をして国民の負託を受けたと言える政権を作る以外に安定化の道はない。 そして次回の選挙については、それを自由・公正なものとするために大規模な国際監視団を招請し、国際的な監視の下で国民が公正と認める選挙を行うべきであろう。
タイ人は誇り高く、国内政治への外国の干渉を嫌う。しかし他に良い案は見当たらない。カシット外相は赤シャツ側が国連の仲介を提案した際、「タイは破綻国家ではない」と述べたとされるが、このままでは、内戦のような状況に陥り、破綻国家になりかねない。対立する両派を納得させるための国際的監視を利用する度量を示すべきであろう。危機意識を持つ必要のある事態である。日本とタイは友好的な関係をずっと保ってきた。タイに進出している日系企業も多い。タイの安定化のために、果たすべき役割を米国などとも意見交換し、タイ側とも話し合うことが必要ではないかと思われる。(おわり)
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