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2010-05-17 00:00
「鳩山・一郎降ろし」はなぜ機能しないか
杉浦 正章
政治評論家
日本の政治が「異常なる政権継続」の場面に立ち至った。紛れもなく資質のなさが露呈した首相・鳩山由紀夫はまさに「右往左往」の状態だが、聞くところによると、「千万人といえども吾往かん」の心境だそうだ。「政治とカネ」で居座る民主党幹事長・小沢一郎は「正義が行われない政治」の象徴となっているが、全く意に介していない。両者の居座りはいまや単なる一政権の問題ではなく、日本の民主政治そのものの危機の様相を濃くしている。なぜ政治は「鳩山・一郎」政権の異常なる継続に終止符を打てないのだろうか。意気が揚がらない「5月政局」を、民主党の党内事情と野党の対応の両面から分析してみたい。とにかく異常なる静けさだ。閣僚から出る発言は、擁護論か、犬の遠吠え的発言のみだ。反小沢系7奉行を束ねる渡部恒三も、小沢辞任に関しては「鳩山君がやること」と、評論家みたいな発言を繰り返している。あんまり「鳩山君が」と言うので、TBSの「時事放談」では女性アナウンサーがたまりかねたように、「恒三さんがやるしかない、のではないでしょうか」と視聴者の声をを代弁した。こうした事態の中で鳩山周辺からは「首相は、これからさらにやるぞという心境」との意気込みばかりが伝わってくる。まさにハナ肇主演の映画「馬鹿が戦車でやってくる」そのものの風景だ。
なぜ民主党内に政権交代の動きが盛り上がらないのだろうか。渡部がなぜか「逃げの恒三」になってしまったこともあるが、その原因の第一は、政権党になったばかりで、政権を倒す「政局ノウハウ」が周知されていないことだろう。倒し方を知っているのが渡部一人の状態では、動きようがあるまい。自民党では首相に退陣を迫るときは、まず派閥横断的な反主流組織が生ずる。戦後最大の「首相降ろし」は1976年の「三木降ろし」だったが、この時は反主流6派が中心となって自民党議員277人で挙党体制確立協議会(挙党協)を結成し、三木武夫に対して退陣要求を突きつけた。しかし、それでも三木は辞めず、結局最後は衆院選敗北の責任を取っての辞任だった。277人が集まっても、首相という存在は、「辞めない」といえば辞めないで済むのである。辞めるのは不信任案が可決されて内閣総辞職の時と、病気の時だけだ。こうしたノウハウが積み重ねられていたから、自民党政権の場合は、三木降ろし以外の多くのケースで、いったん「首相降ろし」が始まると、政権の側も観念するのが早かった。
加えて民主党の場合、小沢に権力が集中しすぎている。政党資金を使うのも小沢、党の人事をするのも小沢では、下手に声を上げれば「日干しの刑」にあうだけだ。小沢のやり口も、露骨かつ陰険で、反小沢系の野田佳彦のグループは組閣に当たって徹底的に干された。最近でも代議士会で鳩山・小沢に退陣を迫ると予告していた小沢チルドレンの横粂勝仁も、猛烈な圧力で代議士会では発言できず、場外発言にとどまった。しかし今行動を起こさなければ、10%台に陥った内閣支持率はさらに急落し続けるだろう。再度不起訴になろうと、政倫審で釈明しようと、小沢への辞任要求の声は天井に達して、突き抜けるような勢いだ。結局参院選では、焦点の1人区で前回自民党が29選挙区で5人しか当選しなかった例が、そのまま民主党の選挙結果となりうるだろう。総選挙になれば、小沢チルドレンもバブルの泡と消えるだけだ。
一方、自民党の動きが鈍いのはなぜか。筆者は昨年から、参院選は「鳩山・一郎体制のままが自民党にとって最良」と指摘してきたが、おそらくその方向を狙っているのだろう。政党支持率が自民党の場合低迷しているが、行き場を失った浮動票は、自民党とみんなの党が吸収するしかあるまい。長崎県知事選などの結果が、それを証明している。小沢は閣僚ポストを相当数差し出して、公明党やみんなの党との連立を狙うだろうが、今回の参院選挙の場合、反民主票としての選挙民の意向を両党とも裏切るわけにはいくまい。みんなの党幹事長・江田憲司も「民主党との連立は絶対にない」と断言している。したがって、衆参ねじれとなる可能性が強い。いまの自民党執行部に、「攻撃しつつ、逃げ道を残す」などという高等戦術が出来るわけがないが、結果として事態はそうなりつつある。今や自民党に残された道は、民主党政権の「体たらく」のクローズアップに専念して、参院選に臨むしかないのだろう。このように与野党それぞれの事情で「異常なる鳩山・一郎体制維持」の結果となっているのだ。ツー・トップの居座りで普天間と「政治とカネ」だけが「政治」という現状を打開する策は、有権者にとって参院選挙でねじれを達成させ、早期衆院選挙を実現させることにかかってきているのだろう。
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