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2010-05-05 00:00
「浅かった」では済まされぬ、首相の資質なき鳩山
杉浦 正章
政治評論家
「学べば学ぶほど、海兵隊の抑止力が分かった」という発言ほど、首相・鳩山由紀夫の訪沖の実態を物語る発言はない。また、国民を馬鹿にした発言もない。誰もが知っていたことを知らないことを無知というが、一国の首相がその「無知」を露呈したものにほかならない。元衆院議員・徳田虎雄との無意味な会談といい、県民の総スカンにあった訪沖といい、鳩山が独走的にアリバイ作りの悪あがきをしているとしか思えない。公約の5月末決着は、あがけばあがくほど遠のき、鳩山は窮地に陥る。普天間5月政局の姿が浮かび上がってくる。
いまだに説明していないが、訪沖によって鳩山の「腹案」なるものは「沖縄県内・徳之島」案であることが確定した。「最低でも県外」と、はかない期待を県民に抱かせ、政治主導を推進したつもりが、究極の公約違反である。「党の公約ではない」と見苦しい言い訳をしているが、鳩山がほんのこの間まで「県外」を言い続けてきたことは、周知の事実であり、トップの発言は公約そのものだ。その変節の理由に関しての発言ほど、国民を馬鹿にしたものはあるまい。鳩山は「最低でも県外と言った当時は、海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならない理由はないと思っていた。学べば学ぶにつけて、海兵隊の各部隊が連携し、抑止力を維持しているという思いに至った。浅かったと言われれば、その通りかもしれない」というのである。米海兵隊がなぜ沖縄に駐留しているのか、8か月の迷走の末にようやく気づいたのかと言いたい。
キーポイントでの発言撤回は、毎度のことで慣れっこになってしまっているが、この発言だけは看過できない。なぜなら、まかり間違えば国民の生命・財産を直撃する安全保障問題に関する発言であるからだ。首相になるほどの政治家ならば、安全保障問題の最低限の基本は少なくとも身につけていなければならない。それを、一番の因果関係を理解しないまま、「自民党政権の合意だから反対」という立場からのみ、県外移設を唱えていたことになる。「浅かったと言われれば、その通り」で切り抜けられると思っているのだろうか。首相としての資質の欠如そのものだ。鳩山発言の裏には、持ち前の県民向け“パフォーマンス政治”が行き詰まり、米国向け“擦り寄り路線”への転換がいみじくも浮かび上がっている。前政権の日米合意である「辺野古沖埋め立て」案を、「くい打ち方式」に修正する案なら、米国も受け入れると踏んでいるのだろう。しかしそれは甘い。米国はテロ対策上の懸念に加えて、鳩山政権そのものを信頼していないからだ。「できれば、倒れればよい」というスタンスのように見える。
今後の展開は2点に絞られる。一つは、地元の同意抜きで月末までに「県内・徳之島」案を閣議決定して、強行策に打って出ること。他の一つは、5月末決着を断念して、先送りすることである。前者の強行策は、くい打ち方式なら埋め立て方式と異なり、県知事の許可が不要なことから、やろうと思えば可能だ。しかし成田闘争を上回る紛争が生じることを覚悟しなければならない。労働組合を基盤に置く政権に果たしてそれが可能であろうか。一番やりそうなことは先送りだ。鳩山が今行っているパフォーマンスをアリバイ作りと判断すれば、あり得る選択だ。「出来るだけのことをやったが、出来なかった」というアリバイを成立させた上での、先送りだ。政権の蜜の味を味わった社民党党首・福島瑞穂が一番期待しているのは政権離脱より、先延ばしのうやむや路線だろう。民主党内でも先送り論が強まっている。
問題はこの2つのケースのいずれにも、世論と野党がまずくみしないことだ。「政治とカネ」をめぐる鳩山と幹事長・小沢一郎の説明責任なき“居座り”に加えて、普天間での行き詰まりで、新聞もテレビ・メディアもこの政権にはほとほとあきれかえっているのが現実だ。責任を取らなければ、参院選で徹底的に叩くという構えでもある。その論調が左右する世論調査も、10%台への陥落目前だ。最重要課題で展望も、成算もないまま、参院選まで迷走を続けさせるか、5月末政局で区切りをつけるべきか。世論はおそらく5月末政局での責任追及に動くだろう。辞めなければ“袋だたき”が参院選まで続くだけだ。支持率は史上最低だった竹下登の4・4%を下回りうる。野党も、もちろんこの流れを最大限活用する。
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