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2010-04-25 00:00
(連載)医療保険改革の危機を乗り切ったオバマ大統領(2)
若林 秀樹
元参議院議員
これが日本であれば、どうだったであろう。米の「医療制度改革」のように、世論調査上は「子供手当て」が明らかに不人気であったとしたら、支持率が下がった鳩山政権は、起死回生をかけて法案を強引に通したであろうか。ポイントは、世論調査という天の声をどう捉えるかである。確かに「法案反対」という世論調査結果は謙虚に受け止める必要はあるのだが、世論とは常に変動するものであり、選挙までの時間軸の中でそれに振り回されてはならないという考え方がある。まさにオバマ大統領は、この医療制度改革が米国民のためになるという信念を貫き通し、国民はその先頭に立って戦うオバマ氏のリーダーシップを高く評価した。それがアメリカの政治文化なのかもしれない。
むしろ今後の米世論は、一旦は不人気であった法案の成立を歓迎し、オバマ大統領への支持率は上がるかもしれない。事実、アフガニスタンへの米軍増派がそうであった。オバマ氏は日頃から、本心かどうかは別として、「人気取りの政策はしない、国民のためになる政策を実施する。それが原因で一期だけの大統領になっても構わない」という趣旨の発言をしている。また、日本人にとって一番理解できないのは、先進国では常識である国民皆保険を経済大国のアメリカでは何故導入できなかったのか、ということである。米国では、国民の2割近い4600万人とも言われるひとたちが、保険未加入のまま放置されている。
皮肉にも、中間層では逆に保険未加入者は2割しかおらず、8割の人にとっては、これまでの医療保険制度の結果として、負担増となりかねない。それで国民皆保険への政治的圧力が弱くなったという側面もあった。しかし最大の理由は、アメリカでは伝統的に政府の関与を嫌う価値観が強く、医療保険は他の先進国のようにすべての国民に適用されるセーフティネットとして見なされていないことである。つまり、自らの健康維持は自らの責任において行うべきものであり、市場経済の一部である医療では、高額所得者が高度な治療を受ける権利があるのは当然である、という考え方である。
しかし、そのことで高度医療が進み、米国の医療費を押し上げている要因になっており、さらには、高額医療が保険料の高騰を招いて、保険未加入者の比率を高めている悪循環にもなっている。いずれにせよ、今回の医療保険改革は大きな前進ではあるが、中身は妥協の産物であり、現行制度の拡充という見方もある。これで本当に国民の95%が医療保険でカバーされ、財政の負担も減るのか、全くの未知数である。ましてや、これでオバマ政権の政治的危機が遠ざかったというのは、もっと不確かなことかもしれない。オバマ大統領にとって、今後の最大の課題は、経済回復と失業率の改善であり、茨の道は続く。(おわり)
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