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2010-04-26 00:00
「共同」「時事」の再合併を促す「日経」電子版の登場
杉浦正章
政治評論家
日経新聞電子版の有料本格運用が5月から始まるが、事前に購入して約1か月間つぶさに研究している。その結果判明したことは、共同、時事両通信社を凌駕(りょうが)しうる「第3の通信社」が躍り出たということだ。通信社にとって生命線の「速報」の基本をしっかりマスターし、それを徹底するという通信社にとって何より必要な躍動感に満ちあふれている。朝日新聞をはじめとする他紙の電子欄には、スピード感がなく、新聞のニュース判断の特色である一覧性がないが、日経は紙面そのものを見られる。月額4000円を高く感じさせないのだ。販売店とのしがらみにとらわれる大新聞や共同・時事はそのあり方を厳しく問われている。
「通信社日経」はさまざまな面で現実のものになっている。まず速報性だ。公平を期すために4月23日の参院本会議で鳩山が「普天間に職を賭す」と発言したニュースの配信ぶりを見る。記者が必ずいる場所での報道であるから、スタートは同じだ。日経が一番早く12時16分なのに対して、webを見ると共同は12時23分、時事は12時48分と大きく遅れた。この速報という仕事は、通信社にとって生命線だが、日経はその基本を十分踏まえている事が分かる。筆者が時事編集局でたたき込まれたニュース速報システムが、新聞社でここまで完成の域に達しているとは驚いた。日経のスピード重視への並々ならぬ努力があると感じる。もちろん鳩山答弁だけではない。経済、金融、株式、政治などあらゆる分野で速報を旨としている様子が分かる。両通信社は、形無しである。このままでは速報のお株は「日経通信」に完全に奪われるだろう。筆者が現役のころ既に日経や朝日がしきりに通信社の報道の仕方を研究していることを感知していた。両社の記者仲間から速報のやり方についてよく聞かれたからだ。しかし朝日はウェブ上で当初行っていた速報ぶりが、なぜか衰えており、日経はますます盛んになっている。
記事の内容もレベルが高い。例えば「新党改革」の結成だ。第一報のニュースで、「新党」といっても舛添要一が自民党を離党して、改革クラブに入党し、政党名を変更する方向で調整していることを報じたのは、日経だけだった。特ダネと銘打たなくても、記事の中で光る材料があるのだ。これは夜討ち朝駆け取材が徹底して行われていることを物語っている。小生が出先記者のころは、「日経少年探偵団」とからかわれていたものだが、小林少年は明智小五郎に成長した。ニュース速報は、パソコンと携帯電話にまで飛んでくる。重要ニュースと希望するジャンルのニュースが、すべてメールされるのである。既に米国ではワシントンポストが実施しており、筆者も受信している。世界のウェブ新聞の傾向を研究していることが分かる。これはどこで飲んでいてもニュースが分かるということになる。電子版の画面は、新聞紙面と若者が好む横書きのウェブ画面が見事に融合している。ウェブから紙面へ、紙面からウェブへと容易に変換できる。紙面をテキストで保存したければ、ウェブ記事をダウンロードするだけだ。プリントしたければ、紙面をプリントできる。筆者はやはり紙面が見られる「産経netview」も、発足以来3年間愛用している。これは月300円と安いが、速報性とニュースの厚みにおいては、日経の比ではない。加えて重要なのは、日経の場合、内外のコンフィデンシャル・ニュースが読めることだ。
新聞にはあからさまに書けない部分のニュースが、読者の一番知りたいところでもある。この点、週刊誌ほどいい加減ではないものが、電子版では読める。電子版は既に6万の契約者がいるようだが、今後増加傾向をたどるだろう。ただ個人的な話だが、筆者は、俳句欄に電子メールで応募投稿しているが、葉書のころより採ってもらえないのはどうしたことか。選者が古くて、メール投句を馬鹿にして、葉書の自筆書きを重視しているのではないかと思いたくなる。日経社内でもIT化は濃淡があるのだろうか。また社説だけは、他紙に比べて掲載が遅い。読売は午前1時台、朝日は2時台には掲載しているのに、日経は明け方まで掲載しない。この「通信社日経」の登場は、既に米国で始まっているウェブ新聞の有料化の傾向が日本でも本格化することを意味している。販売店依存の新聞経営が将来は崩れる方向かも知れない。過疎地で一戸あたり4500円も掛けて、赤字で新聞を配達する時代ではなくなったのだ。もう共同も時事もお互いに競合している時代ではあるまい。日本に第3の強力な通信社が登場しては、生きる道はますます狭まってくる。いまや戦後GHQの指示で同盟通信を解体して出来た2通信社体制を再合併して、強力な1つの通信社を作り出すときだ。合併すれば、体力が残っているいまなら、まだ最強の国際通信社を目指せる。
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