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2010-04-09 00:00
与謝野・平沼新党はなぜ、なにをしたいのか
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
渡部恒三氏の発言は、あの独特のイントネーションでいつも心を和ませてくれる。今回の与謝野・平沼新党の一件を「老人家出」と切って棄てたのには、腹を抱えた。まあ、老人か青年かはともかくとして、何をどうしたいのかが、これほど見えにくいというのは、老練な政治家の行動としては解せないものがある。平沼氏はよいとしよう。もともと一匹狼で過ごしていたことでもあり、彼自身の出処進退は別に変化している訳ではなさそうだからである。鳩山邦夫氏のすり寄りにも毅然としているあたり、彼の哲学に対する賛否はともかく、首尾一貫しているといってよいだろう。
もともと与謝野氏は、伝えられる識見・経綸の深さにも関わらず、それを世に伝える手法については、お気の毒なくらい下手なようにお見受けした。今回もその例にもれないようで、おやりになりたいことが、メディアに現れたところによれば、今のままの自民党では吸収できない有権者の意向を汲み取った上で、「反民主」というスローガンの下に、他日自民と連合を組むのだという。いくらなんでも現実離れしたシナリオだと気がひけたのか、その想いの正統性を保証する後見人として、読売の主筆とか、大勲位とか、本来終わっている筈なのに終わりたくないような人たちを糾合した、というのだから、そのセンスのずれていることは甚だしいというべきだろう。彼ほどのキャリアのある政治家が、そんなことに気がつかない筈がないとすれば、彼をして行動に走らせたのは、何だったのだろうか。
その点について憶測を逞しくすることは、いくらでも出来る。しかし、動機と目的について推測を加えねばならないという事実自体が、世論の支持が期待できそうもないという予測を裏書きする。なぜ、なにがしたいのか。それが判然としない限り、政治運動として結実することなどあり得まい。それに較べれば、口当たりが良くて、耳ざわりの良いことならば、何でも約束してしまう鳩カフェ主人の方が、まだしも力学を知っているというべきだろう。与謝野氏は戦わずして敗れている。
与謝野氏の動きが契機になったのかどうか、谷垣自民党が遅ればせながら河野太郎氏を始めとする元気の良い人々に活躍の場らしきものを与えた。思い起こせば「加藤の乱」に当たって、「大将なのだから」と加藤紘一氏の袖を引き止め、彼の政治生命を終わらせたのは、他ならぬ谷垣氏だった。谷垣氏が当時の情勢判断の甘さを反省なさっているのか、それとも基本的に乱を好まぬ性格は変わっていないのか。谷垣執行部がどのような新しい自民党の青写真を描くことに成功するか、不安半分、楽しみ半分ではある。
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