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2010-03-16 00:00
(連載)「核密約」調査は大きな一歩前進だが(1)
若林 秀樹
元参議院議員
この度の外務省による日米密約に関する調査報告は「遅かりし」という印象を拭えないが、政権交代がなければ果たしえなかったことであろう。そして「公然の秘密」となっていた密約の実態を相当程度明らかにし、今後の外交文書の記録や公開のあり方等のいくつかの点で教訓を導き出したことは、大いに評価できる。しかし他方で、日米安保の意義、非核三原則と核の傘との関係等について、今後の我が国の安全保障を考える上で自民党政権時とは違う健全な安保議論に結びつけようとする踏み込みは無く、引き続き根源的な課題を残すことになった。
今回の調査の成果は、政権交代による効用として「密約」の検証自体を実施したことに加え、いわゆる「密約」問題に関する有識者委員会報告書(以降、報告書)の内容において、明白な公文書が無くても「広義の密約」という概念を持ち込み、暗黙の了解や合意があれば密約は存在すると規定したことである。これまでの政権であれば、有識者の第三者委員会とは言え、政治的圧力により日米で合意した公文書が日本で発見されない限り、「密約」とは認定しなかったのではないかと思われる。「報告書」の冒頭で、座長である北岡伸一氏は、「決定的な証拠がなくても、歴史研究者として確実に推定できることについては、踏み込んで判断を行うべきだと考えた」と記している。
歴史を解釈する上で、このような考えに基づき、報告書を取りまとめた北岡氏のリーダーシップに心より敬意を表したい。ちなみにこの「報告書」そのものが戦後の日米外交史を知る上で貴重な資料と言えよう。その報告書の中で、1点だけ腑に落ちないのは、佐藤首相とニクソン大統領が署名した沖縄への核持ち込みに関する「合意議事録」の扱いである。「報告書」では、佐藤家で発見されたが、後継内閣には引き継がれておらず、効力はないので「密約」には当たらないとしている。
しかし仮に外務省が関与せず、それを裏付ける資料がなくとも、その文書は両国首脳が署名した「国際法上での合意」(栗山元外務次官)であり、一時的にせよ両国を拘束する密約であったことは事実である。そして仮に引き継がれなかったら、「合意事項」は失効するのであろうかという疑問がわいてくる。もしアメリカ側で引き継がれていたら、効力は継続したのであろうか(現に米側は「継続している」と思っているかもしれない)。少なくとも「国際上の合意」が文書の保管場所や引継ぎの有無で反故にされていいとは思えない。(つづく)
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