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2010-03-12 00:00
朝鮮学校除外は、国によるチマ・チョゴリいじめだ
杉浦 正章
政治評論家
鳩山政権は自らの目玉政策である「高校無償化」の対象から朝鮮学校を「国交なし」を理由に除外する方針であるという。朝日新聞がトップで報じている。根底には拉致問題などで最悪の状況にある北朝鮮との外交関係があるが、これはいささか次元が違うのではないか。確かに朝鮮学校には金日成・金正日の肖像が掲げられており、北の影響が強い教育がなされているふしがある。しかし、大阪府知事・橋下徹が述べているように、暴力団の下部組織ではない。また通学する子弟に何の罪もない。一時期、朝鮮学校生徒のチマ・チョゴリ切り裂き事件が続発したが、これは国家レベルでのチマ・チョゴリいじめではないだろうか。国家百年を見据えた教育の有り様とは思えない。
首相・鳩山由紀夫は11日、「高校無償化の法案をあげてから、文部科学大臣が省令で決定するということだから、その後になることは間違いないが、ある程度時間がかかる」と述べた。また「高校の課程に類する課程であるかどうかという判断を、政府が勝手に決めるということもできない。何らか客観的な基準というものを作るということが必要」とも強調した。これは明らかに問題「先延ばし」であり、すくなくとも当面は「除外」に傾いていることを物語っている。というのも、政府は無償化の4月実施を目指して法案成立を目指しているからだ。
そもそも朝鮮学校除外の発想は、最初から外交絡みであった。国家公安委員長・中井洽が文科省に申し入れたのは、拉致問題が進展しないことを理由にしていたからだ。鳩山もこれに半ば同調する発言をして、除外の流れができた。自民党も11日の文部科学部会・拉致問題対策特別委員会合同会議で、朝鮮学校を対象とすることに反対することを決めた。府知事・橋本に至っては、「学校経営に暴力団関係者がかかわっていたら税金を投入できないのは、府の規則でも決まっている。北朝鮮という国は暴力団と一緒。暴力団とお付き合いのある学校に助成がいくのがいいのか」と、朝鮮学校を暴力団の下部組織扱いしている。産経新聞も主張で 「拉致された日本人のことを考えると、国家テロを主導する独裁者を神聖視する教育は、国民感情として受け入れられない」と拉致絡みの主張をしている。
しかし、これらの論調はいずれも浅薄で、感情論に過ぎない。法案の本質は、高校教育の充実にあるのであり、近視眼的に当面の外交課題を理由に掲げて対応する問題とは次元が異なる。根源は、日本による朝鮮半島併合と第2次世界大戦にあるのであり、しかも朝鮮学校生の半数が韓国籍だ。拉致に関わりの全くない子弟2000人の心にどう反応するかを、政治家は考えるべきではないのか。この国家レベルのチマ・チョゴリいじめは、生徒を傷つけるばかりでなく、本当にチマ・チョゴリ切り裂き事件などを誘発する恐れがあるのだ。それとも北朝鮮に対する外交制裁が何ら進展しないのに業を煮やして、何の関連もない生徒を外交制裁の対象にするのか。だいいち「子ども手当」では何らの差別もせずに、高校無償化だけを差別の対象にするのは、明らかに鳩山政権の論理矛盾だ。政府の方針は今後も日本社会で市民として役割を果たすであろう子弟の心に深い傷跡を残し、ひいては国家にとってマイナスに作用すると心得るべきだ。偏狭な島国根性で対処すべき問題ではない。ちなみに床屋談義的に軽い産経の主張の他は、朝日、読売、毎日の全国紙すべての社説が、朝鮮学校除外反対であることを付言しておく。
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