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2010-03-03 00:00
山を越したトヨタ車問題
茂田 宏
元在イスラエル大使
2月24日、トヨタ自動車のリコール問題で米下院公聴会が開催され、豊田章男社長が出席し、謝罪し、今後品質管理の強化やそのための措置を約束した。豊田社長の公聴会での対応が真摯であったこともあり、米国内でも好感をもって受け止められたと考えられる。米在住の友人よりは「メディアの反応はよい。トヨタの工場が立地している州の知事や工場労働者、トヨタを販売している販売店を中心に、トヨタ叩きが行き過ぎているとの声も強く、これ以上大きな問題にはならない」という見方を伝えてきた。政治的には、GMもクライスラーも米政府が大株主であり、米政府としても、自己利益を図るために「トヨタに対して公正でない」と見られたくない事情がある。
この問題が全体としての日米関係に与える影響はないと言ってよいだろう。日本バッシングの引き金になることは考えられない。2月25日、イランのラリジャニ国会議長などとの昼食会の席上、同じテーブルにいたイランの国会議員から「トヨタ問題が日米間で今後大きな問題になるのではないか。日米関係は悪化しないのか」との質問があった。日本側の参加者から「商品の安全性に消費者が懸念を提起した場合、いかなる政府も議会も反応せざるを得ないという消費者問題であって、日米二国間の政治問題ではない。日米関係に影響を与える問題ではない」との説明がなされた。私もまったく同意見である。消費者問題は中国の毒餃子問題に見られるように、真摯な対応をしないと後を引く。その上、心理的な問題であるので、その処理は政治問題より難しかったりもする。しかし今回のトヨタの対応は問題が発生した初期はともかく、いまでは適切な対応になっており、消費者問題としても、今後鎮静化すると考えられる。
トヨタは大ざっぱにいうと、2008年、日本で2百万台、米国で2百万台余、欧州で百万台、アジアで90万台余、販売している。顧客はトヨタの車の性能やそのアフター・ケアの良さに着目してトヨタ車を購入してきたのであり、自分で使ってみて満足してきている。それが今のトヨタの業績につながっている。トヨタが売ってきたのは「物」であって、それから信用が出てきている。トヨタが今回のリコールで信用に傷が付き、一時的に販売不振に陥いることはあるだろうが、また回復するだろう。金融商品などはその証券などの発行元の信用が最重要であるが、「物」については、顧客が自分で判断しているところが大きいという違いがある。
なお、私の大使時代のイスラエル人の運転手は、レクサスについて「この車は車内が静かだ。スポーツ・カーみたいで加速が素晴らしい」と高く評価していた。当時のイスラエル大統領カッサブさんが公用車をベンツからレクサスに変えたいと言っていたが、在庫がなく、これは実現しなかった。
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