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2010-02-26 00:00
ティーパーティ運動は「保守」の逆襲と言いきれるか
若林 秀樹
元参議院議員
アメリカ人にとって「ティーパーティ」とは、政治的抗議(political protest)の象徴である。これは言うまでもなく、1773年12月、イギリス政府が押し付けた茶税に反対し、植民地の住人がボストン湾に停泊中の東インド会社船の積荷である茶を海に投げ捨てた「ボストン・ティー・パーティ(ボストン茶会事件)」に由来するものであり、この事件が発端で後にアメリカ独立戦争が勃発した。
今回の「テイーパーティ」の舞台の中心はワシントンである。オバマ大統領の大規模な景気刺激策や医療保険改革に代表される「大きな政府」政策に反対する草の根運動が、全国的な保守主義運動に発展した。その切っ掛けの一つは、昨年2月19日、CNBCのコメンテーターのリック・サンテリ氏がシカゴの取引所において、住宅差し押さえ救済策に異議を唱え、それが You Tube 等を通じて広がったことであると言われている。その後、抗議デモや運動が全国に広がり、一躍脚光を浴びたのは、本年1月19日、医療保険改革に熱心に取り組んでいたテッド・ケネディ上院議員の死去に伴う特別選挙だった。まさにマサチューセッツ州でケネディー家が約60年間守ってきた民主党の議席が、共和党候補者(スコット・ブラウン氏)によってボストン湾に投げ捨てられたのである。そしてこの勝利に「ティーパーティ運動」が大きな役割を果たしたと言われている。2月4日からはテネシー州ナッシュビルで、「ティーパーティ」初の全国大会が開催され、6日、ペイリン前共和党副大統領候補(前アラスカ州知事)が基調演説を行い、気勢をあげた。
このような政府に抗議する運動は、これまでもよくあったことである。特に現在は、深刻な経済情勢と高い失業率、過去最大の財政赤字、イラクやアフガンへの軍事的対応、テロの脅威等の問題を抱え、国民の怒りが爆発してもおかしくない。批判の矛先は、民主党のみならず、解決策を示せない共和党にも向いている。まさにワシントン(既存政治)への不信感である。しかし、果たしてこの「ティーパーティ」が更に大きなうねりとなり、本年11月の中間選挙、そして2012年の大統領選挙に大きな影響を与える政治運動になりうるのか、米国専門家も見極めかねている。
理由はいくつか挙げられよう。まず「ティーパーティ」は現時点において政府やウォールストリートに対する不満や怒りによって運動が拡大してきた経緯があり、その路線は必ずしも明確になっていない。当初は過激な極右に近い運動家に引きずられがちであるが、運動の中心である無党派層は極端に偏った政策は好まない。果たしてこの運動が「第3の政党」を目指すのか、共和党への支持を拡大していくのか、不透明である。またテイーパーティは強力なリーダーを立てて活動していくのかどうか、この点も大会の中では意見が分かれていた。サラ・ペイリン氏の人気は確かに高いが、大統領としての資質については問題があると見られている。
オバマ大統領の誕生に象徴されるように、アメリカは自由でリベラルな国であるとの印象が強いが、現実には保守主主義がアメリカ社会に深く根付いている。ギャラップ社の調査(2009年)によれば、国民の40%が自分を「保守」と見ており、35%が「中道」で、「リベラル」は21%に過ぎない。つまりこの「中道」がどこに動くかによって選挙の行方が決まる。1980年代は、レーガン大統領の登場により、民主党支持層や無党派層が保守に動いた(レーガン・デモクラット)時代であった。2月6日、ペイリン氏は、生きていればレーガン大統領の99回目の誕生日であることを意識し、「我々は今、保守主義の価値と良い仕事の番人になった」と述べた。果たしてこのティーパーティ運動がどこまで支持を広げて拡大するのか、本年はアメリカ政治の動きから目が離せない。
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