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2010-02-19 00:00
“衆参ねじれ”で「小沢独裁阻止」がキーワード
杉浦 正章
政治評論家
2010年度予算が年度内に成立する見通しとなり、政局の焦点はいよいよ、参院選挙に移行する。既に事実上選挙対策を一任されている民主党幹事長・小沢一郎は、全国を行脚して強気の選挙対策を展開している。複数区に複数候補の擁立、タレント系や女性の起用など、相変わらずの選挙戦術だ。まさに当たるべからざる勢いだが、問題は衆院選と同様の風を期待した選挙戦術が奏功するかだ。選挙基盤を小沢にじゅうりんされている自民党もふがいないが、「政治とカネ」の問題に加えて、もう一つ「必殺」ともいえる主要選挙テーマがある。それは「小沢独裁」を許容するかどうか、をクローズアップすることである。「衆参ねじれを起こして、小沢独裁阻止を」を訴える。これがキーポイントだ。
自らの秘書3人が逮捕されて、首相・鳩山由紀夫の「平成の脱税王」と並び、「永田町の不動産王」と称される小沢だが、選挙に関しては鼻息が荒い。2月18日には、参院自民党のドン青木幹雄が出馬の意向を表明している参院島根選挙区に、民放アナを擁立する方針を固めた。刺客戦術の再開である。こまめに地方を回り、「政治とカネ」どこ吹く風と、独自の選挙対策に余念がない。しかし、小沢のこの姿に、ひたすら「テクニックだけで選挙に勝てる」と思い込んでいる男の哀れさを読み取ることは容易だ。なぜなら、ツートップの疑惑で、参院選挙には「民主党に政権を取らせて失敗した」とする国民心理が、必ず作用するからだ。鳩山、小沢が居座れば、居座るほど、民主党にとってマイナスの構図が浮かび上がる。加えて参院選は、民主党のマニフェストが利かない。衆院選に次いで2度だまされるような国民ではあるまい。マニフェストを唱えれば、唱えるほど、逆に実現性が問われるのだ。したがって参院選挙には総選挙のような追い風は吹かない。
この状況下での自民党の選挙戦略は、まさに正攻法しかない。地道に政治道徳と政治家の責任を訴え続けることだ。そのためには、疑惑の主が居座り続ければ続けるほど、有利に働くと見て良い。長崎知事選の応援者から「小沢ののカネの話が、一番通りやすい。居座ってくれた方が有り難い」という声が聞かれるのが、その証左だ。その上で「小沢独裁」を突くのだ。読売新聞によると、小沢は2月14日久留米市で「参院で過半数を達成して、本当に革命的な主張を達成するには、大きな抵抗を排除しなければならない」と述べている。小沢政治には、この“抵抗排除”の思想がある。抵抗排除が、幹事長室に陳情を一元化させ、超党派議連の会長を独占させ、天皇を恣意的に利用し、自民党を焼け野原にする、と発想することにつながるのだ。まさに小沢独裁政治である。
老いてかくしゃくの塩川正十郎が、2月17日、「民主党は危なくて仕方ない。7月の参院選で過半数をとれば、必ず独裁政治になる」と訴えたが、筆者も全く同感だ。小沢は選挙に勝てば“独裁是認”と受け止めるだろう、またツートップが疑惑の頂点に立っているのに、党内から自浄作用の声が大きく盛り上がらないのは、民主主義政党とは言えない。これを阻止するためには、参院選挙で「小沢独裁」を認めるかどうか、を大きな争点として提起していく必要がある。参院でも過半数を民主党に達成させたら、国民は、戦後民主主義が経験したことのない独裁政治を許容することになりかねないからだ。そのためには自民と公明両党で“衆参ねじれ”を達成させることしか手段はない。まずねじれの達成で橋頭堡を作り、総選挙への体制を整えることだ。もっとも小沢が気づいて得意の“辞任”カードを切れば展開は別だ。
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