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2010-02-08 00:00
(連載)「日・黒海地域対話」に出席して思ったこと(2)
河村 洋
ニュー・グローバル・アメリカ代表
イランについては、グラスルーツの民主化支援に日本も寄与すべきであろう。現在のシーア派神権政治は、パーレビ王政の啓蒙近代化路線を否定して成立している。しかも核開発問題を抱えるイランの現体制は、核兵器に敏感な日本にとって見過ごせない脅威である。何よりもイランの現体制が、暗黒時代への逆戻りを標榜している以上、イデオロギー上は日本の敵なのである。残念なことに、1979年のイスラム革命を契機に発生したアメリカ大使館人質事件の際に、当時の大平政権は、新たに登場した「ならず者国家」との石油化学プラント建設の継続に目を奪われていた。だが結果は、イラン・イラク戦争でこのプロジェクトは頓挫し、日本側は大きな損失を被った。
日本の対イラン外交は、今も皮相な経済優先の方針である。しかしイデオロギー上は、日本とイランが敵対関係にあることを忘れてはならない。先の大統領選挙に見られたように、イランでは反体制の気運が高まっている。日本のイランに対する歴史的な役割を考えれば、再び近代化を目指し、民主主義を広めようとしている、イランの反体制派をこそ積極的に支援すべきだろう。日本の役割と言うと「スカンジナビア型」の経済開発援助による関与が広く行き渡っている。日本の指導者達が「日本は日本にできることをする」と言う際には、まさにこうした平和主義の発想が基になっている。だが、これでは従来からの消極外交と大して変わらない。私は日本も対テロ戦争やレジーム・チェンジといった「英米型」の自由帝国主義的な役割を追求すべきだと主張する。
日本が自由帝国主義的な役割を果たせる場所は、トルコとイランだけではない。東ヨーロッパと旧ソ連諸国では共産主義体制が崩壊したものの、依然として民主化と市場経済化がうまく進んでいない国もある。現在は大統領選挙の最中にあるウクライナは、政治経済的な腐敗に悩まされている。NATOとEUに加盟できたルーマニアさえ、政治機構の透明性では他の加盟国から充分な信頼を得られていない。こうした国々の民主化促進のために、日本は市民社会の形成や思想教育でも一役かえる。
日本は、以上のように東ヨーロッパから中東、中央アジアにいたる「拡大黒海地域」での関与を強められる。ただ、日本が単独で政治的イニシアチブをとるのではなく、政治的な立場と価値観を共有する欧米先進諸国と多国間の綿密な協力を通じて日本の存在感を強めるべきである。日本はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと共に欧米先進自由諸国同盟の中心であるべきだと、私は固く信じている。以上の理由から、私は、麻生太郎前首相の「自由と繁栄の弧」演説を、鳩山由紀夫現首相が掲げる物騒な「東アジア共同体」構想よりもはるかに高く評価している。世界の中での日本の役割を考えるためには、日本を「極東の島国」であるとか、「平和主義の経済大国」であるとか、と決めつける固定観念から脱却しなければならない。そうすれば、日本にも自由帝国主義的な関与が可能になる。これは日本と「拡大黒海地域」諸国のみならず、先進自由諸国の同盟全体に大きな貢献となる。(おわり)
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