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2010-02-07 00:00
(連載)「日・黒海地域対話」に出席して思ったこと(1)
河村 洋
ニュー・グローバル・アメリカ代表
去る1月27日にグローバル・フォーラムが主催する第3回「日本・黒海地域対話」に出席し、各国から参加した第一線の政策形成者達の議論から大いに刺激を受けた。その中でも黒海地域での日本の役割ということになると、外務省の海部篤欧州局中・東欧課長が橋本龍太郎首相(当時)による1997年の「新シルクロード演説」と麻生太郎外相(当時)による2006年の「自由と繁栄の弧」演説に言及したことが印象に残った。両演説とも日本が黒海地域を含めてよりグローバルな安全保障と経済発展に積極的に関与するうえで画期的ではある。特に麻生演説はアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)の外交政策と共鳴するもののように思われる。日米同盟を強化し、かつ全世界規模で日本の政治的存在感を高めるには「自由と繁栄の弧」はうってつけの構想である。
しかし私にとって物足りなく感じたのは、どの参加者も「日本と黒海地域はユーラシア大陸の東西に離れて位置し、歴史的な関わりは薄い。しかしながら、これから両者は、その関係を大いに発展させる必要がある」という前提で議論をしていたことである。私は「日本には黒海からカスピ海、中東にかけての拡大黒海地域で果たすべき歴史的な役割がある」と、強く信じているからである。そうした歴史的な関わりを代表するのがケマル・アタチュルクのトルコとレザ・シャー1世のイランで、両国とも日本が明治維新で行なった西洋化と近代化を規範として、それぞれの暗黒時代から脱け出していった。これがトルコ人の親日感情の根底にある。両指導者とも必ずしも民主的ではなかったかも知れないが、啓蒙専制君主(トルコは共和制だが、便宜的にこの語を使う)であった。そうした歴史的な経緯を踏まえれば、日本には単なる経済開発援助を通じた友好関係以上の積極関与が可能なのである。
まずトルコであるが、長年の宿願であるEU加盟が実現しない事情から、イスラム復古派が勢いづいている。これはケマル思想の否定であり、日本に対するイデオロギー的な挑戦である。日本がトルコの再イスラム化を黙って見過ごしては、世界における自らの地位の否定となってしまう。こうした状況を改善するために、日本はトルコ国民にケマル思想を思い出させ、啓蒙思想と自由主義の普及に向けた教育に取り組むべきである。これは対テロ戦争でイスラム過激派に勝つために大きな貢献となるであろう。
また、トルコのEU加盟を日本が強力に支持することも重要である。トルコにどのような問題があれ、一向にEUへの加盟が認められないとあっては、トルコで絶望感からイスラム回帰の世論が高まっても不思議はない。これが大西洋地域から中東のみならず世界の安全保障に悪影響を与えるのは一目瞭然である。幸いなことに大西洋地域でも日本と関係の深いアメリカとイギリスは、戦後を通してトルコのEU加盟に積極的である。日本は両国とともにトルコのEU加盟を支援してゆける。同時に、トルコをEU加盟国に相応しくする政治改革を日本が支援することもまた必要不可欠である。(つづく)
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