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2010-02-02 00:00
進退窮まり「ポスト小沢」がうごめく
杉浦 正章
政治評論家
政治家の記者会見は、時には言葉でなく、ボディーランゲージを読まなければならない。2月1日の幹事長・小沢一郎の会見は、いつもと様子ががらりと変わった。珍しく声が震えて張りがなく、普段の傲慢な態度はどこかに消えた。何故だろうか。おそらく検察による2度目の事情聴取が相当核心を突いたものになった証拠だ。調書を取り、黙秘権を認める事情聴取は、容疑者扱いであり、ひょっとすると自分が立件されるかも知れない、という心証をを受けたのかも知れない。本人が起訴されようとされまいと、小沢の置かれた政治的な立場は明瞭(めいりょう)だ。辞任すればそれまで。辞任しなければ辞任に追い込まれる。どっちにしても辞めざるを得まい。「ポスト小沢」もささやかれ始めた。
検察と小沢をめぐる展開は、「秘書に加えて小沢立件」と「秘書だけ立件」の2つのケースが考えられる。まず自らが立件起訴された場合だ。小沢は「刑事責任を問われることは想定していないが、もしそういうことが仮にあるとすれば、責任は重い」と述べた。これは、たとえ「在宅起訴」でも、否応なく辞任せざるを得ないということだろう。自らが刑事責任を問われ、辞任せずに済むはずはない。小沢は当然の発言をしただけということだ。しかしこの発言は、「秘書の起訴くらいでは、辞任はしない」という解釈も成り立つ。4日の拘留期限切れで、秘書3人が起訴された場合には、辞任をせずにほおかむりで押し通すという見方だ。毎日新聞だけが、本記事の副見出しに「秘書起訴では続投」との判断を示している。朝日に至っては、本記事の見出しに「辞任」の表現がない。おそらく小沢番記者の「辞めない」という情報と主張が強かったのだろう。
確かに、小沢本人は「辞任したくない」という期待があるのだろう。しかし問題は、それが通用するかどうかだ。国会議員を含めた秘書が3人も起訴されるという事態の重要性が分かっていない。また、秘書起訴で一件落着ではない。起訴後も、時効の中断で共犯者への取り調べは続く。したがって小沢への取り調べは継続するだろう。世論調査では、どの社の調査も70%以上が小沢辞任を求めている。野党は衆院議員・石川知裕が起訴された場合、議員辞職勧告決議案を衆院に提出するし、小沢辞任要求を一段と強める。与党内も渡部恒三ら反小沢の七奉行が既に外相・岡田克也をのぞいては、辞任要求の攻撃モードに突入している。渡部も「4、5月までには、ケジメをつけることを約束する」と明言している。辞任しなければ辞任に持ち込む姿勢を鮮明にしている。辞任しなければ内閣も党も支持率は急降下を続ける。烏合(うごう)の衆の小沢チルドレンは、マスコミの動向に左右されやすく、小沢離れがやがては雪崩を打つだろう。
民主党内は親小沢と反小沢で亀裂が入り、とても代表・鳩山由紀夫の統率力では対処しきれない状態に陥る。鳩山自身も共倒れか、自ら抱き合い心中を選択せざるを得なくなる可能性もある。小沢は辞任したくなくても、ここは辞任へと追い込まれる場面だ。「進退窮まる」とは、まさにこのことを指していう言葉だ。政治家として最後に残された策略は、幹事長は辞めても、議員辞職はせずに、“闇将軍”として党内に影響力を維持し続け、ほとぼりの冷めたころまた復活するというやり方だ。師と仰ぐ田中角栄の手法だが、小沢の場合は、人望があった田中より、人望に欠けた金丸信の失脚のケースに似ている。とても“闇将軍”は高望みだろう。若干の影響力が残せるかどうかのポイントは、腹心の参院議員会長・輿石東を後任に据えられるかどうかだ。その場合、小沢の力を借りなければ生きてはゆけない鳩山は、恐らく輿石を選ぶだろう。しかし輿石は日教組のドンで、外聞が悪い上に、容ぼうが貧相すぎて、幹事長のはまり役とは言い難い。反小沢勢力は、渡部恒三か、岡田の起用を求めるだろう。早くも「ポスト小沢」がうごめき始めている。
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