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2010-01-30 00:00
(連載)対外交流事業の仕分け結果は、国益を害した(2)
田島 高志
国際教養大学客員教授
人物招聘事業は、途上国を中心に海外諸国の有力者や将来を嘱望される若手を日本に短期間招待し、日本の政治、経済、社会及び日本人を理解して帰ってもらう事業で、対象や目的別にオピニオンリーダー招聘、21世紀パートナーシップ促進招聘等々に分かれている。欧米諸国もこのような事業は日本より何倍も大きな予算を使って行っており、海外において親日家や日本理解者を増やし、日本の政策に対する国際的な支持や協力を拡充するために欠かせない事業である。
アセアン留学生奨学金制度は、途上国であり近隣の重要国であるアセアン諸国から各国1名の選別された私費留学生に対し特別の奨学金を与え、専門学科のみでなく、日本語の習得、日本文化の理解、日本人との交流などの機会を十分与え、将来日本とアセアン各国との架け橋になる人材を養成する制度である。長期的に意義のあるこの事業を、仕分け作業は、文部科学省所管の一般の国費留学生制度との重複であるとの理由で廃止すべしと決めてしまった。一般の国費留学生には、日本語習得の義務はなく、日本文化を理解し日本人と交流する機会も余りなく、専門学科を習得するだけで帰国してしまう例が以前から指摘されているが、この事業は、それを改善して、日本外交の重点地域であるアセアンからの特に選ばれた優秀な留学生のみを対象として、将来の日本の友を増やす目的を持った貴重な制度であり、一般の国費留学生制度とは全く異なるものである。鳩山総理は、シンガポールにおける演説でアジア重視の外交を唱え、「人の交流」の重要性を強調したが、それに真っ向から反する仕分け作業の結果であった。「コンクリートから人へ」というスローガンにも反している。
また、内外広報経費は、日本の主張や政策を諸外国に知らせ、また日本の外交努力や諸外国の事情を国民に知らせ、もって日本外交に対する内外の理解と支持を強化するために重要な役割を果している。例えば中国や韓国は、自国の主張の対外広報を近年大幅に強化しており、そのため「日本海」の名称が今や韓国の主張する「東海(トンヘ)」に侵食されつつある情況でさえある。
以上述べたように、仕分け作業による外交予算の縮小や廃止は、財源不足への対処のみに頭が行き、余りにも短期的で誤った見方によるものであったと言わざるを得ない。個別の事業に問題がある場合には、縮小ではなく、その改善や効率化を要求すれば良い。マニフェストの財源不足を無理に補う短期的視野による今回の仕分けは、日本の海外の友人を減らし、日本の国際的地位の向上を危うくし、外交上の長期的な国益の損失を招くものである。今回縮小ないし廃止された結果は、今後の適切な機会に是非復活を図るべきであると強く訴えたい。(おわり)
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