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2010-01-14 00:00
インド洋での日本の給油活動の終結が意味するもの
茂田 宏
元在イスラエル大使
「不朽の自由作戦」の海上阻止活動に従事する諸国の海軍艦船に日本が行ってきた給油その他の活動は、1月15日に終結する。このためのテロ特措法が失効するからである。この活動に従事した自衛官に敬意を表明する。1月11日付け産経新聞は、「複数の政府関係者が、中国海軍が代わりに補給活動を引き継ぐことを検討している、と述べた」と報じるとともに、「原油の9割を中東に依存する日本にとって、そのシーレーンでプレゼンスを失うだけでなく、中国にエネルギー政策の根幹を左右されることになりかねず、政府内に警戒感が広がっている」と報じている。海上自衛隊の活動を中国が引き継いだからと言って、「中国にエネルギー政策の根幹を左右される」というのは、大げさすぎる。そんなことにはならない。公海での航行の自由は確立された国際法上の規範である。
しかしこの補給活動は「テロとの戦い」への日本の参加を示し、危険も少なく、関係諸国より高く評価されていた活動である。こういうものから撤退することは、最近低下しつつある日本の国際的な地位をさらに低下させる効果を持つ。中国が取って代われば、中国の国際的な地位向上に資する。この給油は日本が自主的にやってきたことであり、やめたとしても、普天間基地移転問題のごとく国際合意違反になるわけではない。しかし民主党政権がなぜこういう国際貢献をやめるのか、理解に苦しむ。間違った憲法解釈、あるいは単に前政権の時に反対した惰性で、この給油をやめるのであれば、残念なことである。
この給油などの対象になっていた海上阻止活動は、今後その重要性を増すと思われる。アフガンやパキスタンで米軍増派によって圧力を受けるアルカイダとそのシンパは、今後イェーメンやソマリアに活動の拠点を移していくことが考えられるが、そのためのルートとして海上ルートが最も便利と考えられるからである。
国際平和維持活動への日本の貢献は、現在ゴラン高原に45名の輸送隊員、ネパールその他に若干名が出ているに過ぎない。それに比較し、中国は手元にある資料では2008年11月末現在で2000名近い軍人を国際平和維持活動に派遣している。国際平和維持への貢献でも日本は、中国に大きく後れを取っている。経済面でも世界第2位の経済大国の地位を近く中国に占められる。世界のGDPに占める日本の割合は1990年代初め約18%であったが、今や約8%である。日本の国際的な地位や発言力が弱くなるのは当然である。この日本の国際的地位の低下を止めるためには、経済成長と同時に、日本の国際的な役割の強化を図っていくべきであろう。しかしこの給油活動の廃止など現政権のやっていることは、逆方向を向いている。
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