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2010-01-12 00:00
検察対小沢は、ついに全面戦争に突入へ
杉浦 正章
政治評論家
空地を見つけたのは元秘書の大久保隆規ということになっているが、筆者はそうとは思わない。土地は自宅から700メートルの民主党幹事長・小沢一郎の散歩コースにある。自らが見つけて買いたくなり、疑惑の発端を作ったに違いない。数々の隠蔽工作が荒っぽく、小沢は墓穴を掘りつつあるようにみえる。検察は年末の首相・鳩山由紀夫の元秘書起訴後、間髪を入れず捜査を小沢にシフトさせた。検事総長・樋渡利秋は慎重なようだが、もう現場のリークは止まらない。検察内部の慎重派と推進派の対立は、若手幹部の優勢で推移しつつある。3連休中に極秘裏の聴取が行われていなければ、今週中にも小沢の事情聴取が行われる。既に最大の権力者と検察の食うか食われるかの戦いに入っている。検察として意思統一をする検察首脳会議が開かれるかどうかも焦点だ。
検察のリークは、プロから見るとこれまでと違っている。通常政治家の疑惑関係の事件は1紙を選んでリークして模様を見るのが常だが、今回は“同時多発的”である。元旦の紙面がよい例だ。朝日、読売、東京が同一リーク元とみられる情報で一面の記事を書いている。以後複数社へのリークが続き、1月11日の朝日、読売の朝刊社会面トップが酷似するに至っている。1社にだけリークすると、追いかける社は扱いが小さいが、“同時多発”で大紙面を獲得すればパンチ力が違う。これは首相・鳩山由紀夫の事情聴取も見送ったトップによる政権配慮の消極的な意向にかかわらず、検察の現場が確信的に小沢“立件”へと突っ走っていることを物語る。時効が3月に迫っていることもある。国会開会前にめどを付ける必要もある。
この検察リークに対して、小沢サイドや、親民主党系コメンテーターらから批判が相次いでいる。江川紹子も「やじうまテレビ」で批判したが、新聞出身ながら取材現場が全く分かっていない。読売社会部長・溝口烈が書くところによれば、リーク批判は「鉄板にキリで穴を開けるような取材努力を踏みにじられるような言葉」なのだ。民主党の枝野幸男も「捜査途中の供述が起訴、公判の前に報道されるのはおかしい。検察官には守秘義務があり、リークだとしたら国家公務員法違反だ」と述べているが、取材の実態を知らない。綿密な調査取材の上で検事に質問をぶつけ、顔色が変わるかどうかで記事にしている世界なのだ。政治家へのの解散取材と同じだ。取材現場はリークなどではなく、情報をもぎ取っているのだ。顔色が変わるのが法律違反なのか。弁護士出身にしては分かっていない。小沢への擦り寄りとみられても仕方があるまい。
そこで一見複雑に見える土地購入疑惑を分かりやすく2つの焦点に絞ってみよう。1つは、簡単だ。(1)散歩の途中小沢が空地に目をつける、(2)「買え」と命じて、元秘書・石川知裕に4億円入りの紙袋を手渡す、(3)そのカネで土地を購入する。もう1つは、(1)土地代金支払い直後に4億円の定期預金を組む、(2)それを担保に小沢が署名して、同額の融資を受ける。この2点に尽きる。そして後者は「一体何のためにしたか」という疑惑が起きる。400万円の金利負担までしてである。石川は「思わず4億円借りてしまった」と荒唐無稽(むけい)な言い訳をしているが、この発言は語るに落ちたものだ。この一点から疑惑が解きほぐされるからだ。「思わず借りる」ではけた外れで、とてもあり得ない額だ。銀行から融資を受けて土地を買った形にするように、小沢が仕向けた隠蔽工作という説が100%当たると思う。購入資金を迷宮に入れるための隠蔽であり、1月12日付朝日新聞によると、1994年以降取得した不動産5件で同様の手法をとっていたという。この方式であれば、政治資金収支報告に記載されるのが定期預金を組んだ事実と銀行からの借入金だけになり、資金繰りの過程が分からなくなるのだという。ずるがしこい隠蔽工作だが、ばれるようでは荒っぽい。では紙袋の現金はどこから入ったかだ。国会で土地疑惑を追及してきた自民党・西田昌司は「正規の銀行からの借入金ではない。“B勘定”(裏金)だろう」と推測している。朝日新聞の報ずるところによれば、もっと具体的だ。岩手県の胆沢ダム工事をめぐる裏金のようである。片っ端からゼネコンを呼んで事情聴取した結果の検察リークだ。
それでは政局に与える影響はどうか。通常なら証人喚問に値する。ロッキード事件で中曽根康弘、ダグラス・グラマン事件で松野頼三、リクルート事件で中曽根、東京佐川急便事件で竹下登、細川護煕が喚問されている。小沢の土地購入疑惑ほどはっきりしていないにもかかわらずだ。しかし民主党は参考人招致にすら反対している。「それで通るか」というと、マスコミの袋だたきにあうから、とてもほおかむりではすまされまい。読売新聞の世論調査では、空前絶後の91%、東京新聞も85%が、小沢の説明不足だとしている。事情聴取以降の展開は、小沢本人が絡むだけに、秘書のせいにして逃れきることは極めて困難だ。集中砲火の対象となる。1月18日の通常国会開会以降は、「マザーゲート」の鳩山と並んで、野党とマスコミの攻勢で政権のトップ2人が追い詰められる展開となろう。正月私邸に大勢集めて我が世の春を謳歌した小沢だが、若手名人との碁の試合のように「逃げ切りに失敗」するのではないか。「とても自分からは説明しきれない説明責任」を追及されるからだ。野党時代の民主党は、党是のように「説明責任」を追及したが、その党是の実行を迫られる。鳩山も小沢も政治生命をかけた肉弾戦に突入する。
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