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2009-12-17 00:00
アフリカの貧困を解決する鍵は農業援助
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
アフリカの貧困という時、多くの人々が想起するのは、内戦に伴って無数に乱立する難民キャンプであり、間歇的に発生する飢餓であり、あるいはその両方だろう。餓死寸前の幼い子供の写真を一度ならず目にしている人は多いと思う。その両者共に現在のアフリカの問題状況を端的に物語っていることに間違いはない。しかし、問題認識がそこに留まる限り、出てくる答えは人道援助であり、緊急食料・医療援助ということになる。そして、それは問題を基本的に解決することはない。誤解を避けるために敢えて付言しておくが、緊急援助に意味がないとか、必要がないと言っている訳ではない。そういう現象が発生する根源に対する配慮なり、手当がない限り、ことは解決することがない、と言っているのだ。虐待された児童のけがの手当や、心のトラウマの解決も大事だ。しかし、それで子供を虐待する親が減る訳ではない。
ここから先は、貧困問題あるいは開発問題に多少なりとも関わった人にとっては、余りに初歩的なコメントだから、そういう方は今回のこの投稿は、ここで読むのをお止めいただいた方が良い。要するに「魚を与えるよりは、魚のつり方を教える」方が大事だ、という話が一つ。もう一つは、結果には原因があり、児童虐待と同じように、原因を特定するのは、そんなに簡単な話ではない、ということだ。のみならず、容易に想像されるように、原因が複数絡み合っている場合も多く、解決策についても意見がまちまちなことが多い、という事実である。この他にも論点は山のようにあるが、とりあえずはこの二点にしぼってみようと思う。
さらに興味をお持ちの方には、平野克己氏の『アフリカ問題:開発と援助の世界史』(日本評論社)や山田肖子氏の『国際協力と学校:アフリカにおけるまなびの現場』(創成社)の一読をお勧めする。アフリカは極々一部の例外を除いて、依然として農業を中心とした経済だ。だから、飢餓という限界状況を打破するためには、農業生産性、具体的に言うと単位面積あたりの日々の生活のための穀物の収穫量を上げる他にない。これがさらに進歩して、農家に余剰農産物による蓄積が出来れば、産業も興ろうというものだが、それはまだ夢物語であり、とりあえずは食い扶持くらいは収穫せねばなるまい。これはどこの国でも起ったことだ。
日本だって江戸時代までは、飢饉がしょっちゅう起きていた。これを救ったのは、篤農家であり、単位面積あたりの収穫量増大だった。日本と違って、灌漑も、河川も乏しく、雨水に依存する他ない農民が大多数だから、旱魃は即飢饉を意味する。結論を急げば、先人たちの開発努力の結果、主食料の単位面積あたり収穫量を(雨水依存型であっても)3倍から6倍に出来ることは実証されている。有機農法の信奉者には耳障りかもしれないが、化学肥料と(旱魃に強い)改良種子の相乗効果には見るべきものがあった。そんなものに使うオカネを貧しい農民が持っているものか、という議論はしばらくおく。アフリカに注ぎ込まれている世界各国の援助なるものの何分の一かでお釣りがくる、とだけいっておこう。問題はそれ以外のところにあった。
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