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2009-12-14 00:00
崩壊の瀬戸際にある「ドバイの夢」
石川 純一
「ドバイ発金融不安」の文字が新聞紙面を賑わしている。4年にわたり土地ブームに浮かれていたドバイ首長国(ドバイ)が10月28日、同国初のイスラム債を起債し、19億3000万ドル(約1752億円)を調達したことが、事の発端。ドバイの配布した資料によると、同国はドル建ての5年物固定金利イスラム債12億5000万ドル(利回りは6.9%)のほか、自国通貨建て変動金利イスラム債25億ディルハム(約6億8000万ドル)を起債。利回りは5.65%。63億ドルを超える需要があったという。
ドバイ、要するにドバイ首長国は、アラブ首長国連邦(UAE)を構成する7首長国の1つで、ペルシャ湾(アラビア湾)に面し、カタール、オマーン、サウジに隣接する箱庭のような国だ。近年は観光客を呼び寄せるためのリゾート施設の開発でつとに有名。世界一高いホテルであるブルジュ・アル・アラブの建設や、「パーム・アイランド」と呼ばれる人工島群建設などで、世界中から資金を吸い上げてきた。景気の良いときは、カネに困ることはなかった。が、いったん悪くなると資金回収に乗り出すのが世の常である。
現地からの報道では、ドバイはイスラム債を発行する一方で、11月25日、同じUAEを構成するアブダビ首長国の2銀行から50億ドルの資金を調達したと発表し、そのわずか2時間後には、政府系持ち株会社ドバイ・ワールドと関連不動産開発会社ナキールの債務支払いを半年間猶予するよう債権者に求める方針を表明した。債務総額は誰も分からず、英紙フィナンシャル・タイムズはドバイ・ワールドの債務は220億ドルだと、英BBC放送はドバイ・ワールドとナキールで計590億ドルになるとも伝えた。ナキールはこの12月に35億ドルの返済を迫られており、資金繰りがつかず、支払い猶予を要請したとされる。
ドバイの産油量は日量約10万バレル。国内総生産(GDP)の2%相当。しかし、このトラの子の石油が近い将来枯渇するため、ドバイは1980年代から石油に頼らず、欧州、アジア、アフリカの金融・貿易センターと観光都市を目指す戦略を掲げて、急成長した。その結果、全世界から5500を超す企業が集まり、国際金融センターの一角に食い込むほどの成長を遂げた。が、内実はどんぶり勘定というしかない懐具合の不透明性。いくら借りているのか、当の本人にも分からないというのだからーーー。
石油収入に依存せず、壮大なリゾート開発構想で外資と外国人労働者を集めたドバイへの期待は、金融バブルの崩壊とともに、不信へと転じた観がある。このままで推移すると、中東向け投融資が多い欧州系金融機関に飛び火して、その信用不安となるかもしれず、ひいては欧州経済そのものが不安定になる可能性すらある。こうして見てくると、相対的にリスクの小さい円が買われるのは当然。現在の円高は、喜べる代物では決してないのである。
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