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2009-12-11 00:00
非核3原則法制化は日米安保体制崩壊への道
杉浦 正章
政治評論家
日米核密約を裏付ける文書が次々に発見されて、外務省有識者委員会が1月に出す結論は、密約の存在を肯定することは火を見るより明らかとなった。問題は首相・鳩山由紀夫が外交・安保路線で反米・反安保の路線を取る社民党と歩調を合わせ、「非核3原則法制化」へ一挙に動くことが予想されることだ。朝日新聞など一部マスコミがこれに同調すれば、法制化が実現しかねない情勢でもある。3原則法制化は、日米安保条約に基づく核抑止に決定的なダメージをもたらし、ただでさえ普天間決着先送りで戦後まれにみる関係悪化を招いている日米関係に、取り返しの付かない亀裂をもたらしかねない。外交、防衛当局者は、いまこそ気骨を示して、政治の暴走を食い止めるべき時であろう。
核密約については、安っぽい民放テレビ・メディアのみならず、朝日新聞までが社説で「長年にわたって政府が国民を欺いてきたという、民主主義の根幹にかかわる問題である」とまで断じて、目の敵にしている。しかしこれらの論議で一貫して欠けているのは、東西冷戦という厳しい現実下で結ばれた核密約が、ベルリンの壁崩壊と共に日本の安保路線にまぎれもない“勝利”をもたらした現実である。ソ連や中国から社会党へ大量の資金が流れ、キューバ核危機が発生し、大国の代理戦争であったベトナム戦争が継続し、東西関係は緊迫の極みであった。加えて、核アレルギーの国民体質とこれを扇動する社会党の存在があり、そのはざまで日本の安全を保証する拡大抑止策維持には、密約は不可欠な存在であった。初期自民党政権はよくぞ密約を結んで、冷戦をくぐり抜けた、と評価されなければならない。外務官僚は、一部マスコミの批判に臆(おく)することなく、むしろ密約を評価すべきであろう。問題は、冷戦構造が崩壊し、ライシャワー発言にみられるように密約の存在を米側が明らかにしてからも、日本政府が怠慢にも存在を認めなかったことに尽きる。
したがって、1月の有識者会議の結論が密約の存在を認めても、外交当局は胸を張って先輩外交官の判断に矜持をもって対処すべきである。しかし、密約問題への“悪乗り”が非核3原則への対応をめぐって台頭することには警戒しなければならない。現在は、戦術上黙っているが、社民党が有識者会議の結論をテコにして非核3原則の法制化を唱えることが確実視されるからだ。社民党は先の総選挙でマニフェストに「国是である3原則を厳守し、法制化を図る」と掲げている。党首・福島瑞穂は選挙前8月のNHKの番組で、鳩山に同調を持ちかけ、鳩山は「社民党と協力関係を築く中で、非核3原則法制化に関しても検討をしてゆきたい」と答えている。マスコミの論調は真っ二つに割れている。朝日が「鳩山由紀夫首相は9月の国連安保理首脳会合で、非核3原則の堅持を国際社会に約束した。現実的で妥当な判断である」と堅持を支持し、東京も「鳩山政権が密約検証後にすべきは、非核3原則を堅持すること」と明確だ。法制化を政府が打ち出せば、恐らく支持するだろう。逆に読売は「陸上への核配備の禁止は継続しても、核搭載艦船や航空機の寄港・立ち寄りは可能とする『非核2・5原則』の採用を、前向きに検討していい」、産経は「かねて非核3原則の『持ち込ませず』について、核積載艦船などの寄港・通過の容認も含めた方向で見直すよう問題提起してきた」と「非核2.5原則論」である。
しかし朝日、東京は書生論に過ぎない。北のミサイルが飛来するような状況下において、「非核3原則」を立法化して、それに基づき米艦船の「臨検」を行うのだろうか。まさに噴飯ものであろう。冷戦で敗北した社会主義の亡霊を背負った政党が、鳩山政権で息を吹き返し始めているのであり、法制化は日米安保体制の崩壊を狙う意図が明確である。問題は、鳩山が参院選挙を意識して、国民にうけの良い非核3原則を前面に打ち出し、通常国会での法制化に動く可能性がある点だ。普天間延期で明確になったように、鳩山と社民党は外交・安保でタッグチームを組んでいる。鳩山の「外交・安保音痴」がここでも発揮されれば、日米関係は取り返しのつかない亀裂の一途をたどることになろう。普天間問題に加えて新政権の「非核3原則法制化の暴走」は、外務・防衛当局挙げて阻止すべき課題だろう。いまから予防線を張って身構えておいた方がよい。
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