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2009-12-10 00:00
(連載)日米関係を決める米中関係の深まり(2)
若林 秀樹
元参議院議員
例えばカーター大統領は、1977年、人権外交を掲げて登場し、中国に対して厳しい姿勢で臨んだが、翌年には、米中国交正常化を発表した。1980年代、親台湾派として登場したレーガン大統領はやがて中国との対立を避け、台湾への武器売却の自制へと舵を切っていった。1989年に起きた天安門事件では、流石に米中関係は冷えたが、1993年に登場したクリントン大統領は当初、厳しく中国の人権問題等を批判したものの、それらの問題を通商問題とは切り離し、貿易拡大策を強化して、最終的には融和策に転じた。1998年には、クリントン大統領は日本を素通りして中国を訪問し、米中蜜月を演出したのである。そしてブッシュ大統領は、当初は中国を「戦略的競争国」として敵視したが、9.11移行後は協調路線に転じ、中国を積極的に国際社会へ関与させていく政策(engagement政策)に転換し、今日に至っている。
そして後に歴史を振り返れば、2008年の大統領選挙は、米国の対中戦略転換の分水嶺になったと言われるかもしれない。つまり、オバマ大統領は、対中関係においては選挙期間中でも「EUや日本とは同盟関係にあるが、中国は敵でもない、味方でもない、競争相手だ」と述べる程度で厳しい姿勢は見せず、第二次世界大戦後では初めてのことになるが、中国との関係で「対立」を前面に出さずに大統領に就任した。そしてこの度の訪中は、世界に対して米国の対中戦略の転換を鮮明に印象付けた歴史的な転換点となったと言えるかもしれない。
その上で、これまでも、そして今後とも一層その傾向を強めそうだが、米中関係の行方が日米関係に大きな影響を与えることになるであろう。オバマ大統領は、東京でのアジア政策演説において、米国は今後長期に渡ってアジアへの関与を一層強め、中国とは戦略的な協調関係を強化することを表明した。米国の経済立て直しと安定的な成長のためには、アジアのパワーを活用するしか選択肢はないのである。しかしだからと言って、米国のアジアへの軍事的な関与が経済と比例して維持、強化されるとは限らない。それは、米国の悪化する財政と内政(特に議会)の状況、そして中国の出方次第である。
中国も当面は、米国や国際社会と協調路線を取ると思われるが、今後更に経済、軍事両面で力をつければ、当然のことがなら、中華思想を持ち出すまでも無く、自己主張を強めることは間違いない。アジア地域での軍事バランスを維持し、地域の政治的な安定を維持するには、米国の軍事、経済両面での関与が必要である。そのためにも、日米の間の多面的な協力と良好な日米関係の維持は重要であり、普天間基地移設問題は、日米の間の解決すべき重要な試金石であることは言うまでもない。(おわり)
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