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2009-12-07 00:00
(連載)ロシア鉄道爆破事件に思う(2)
大富 亮
チェチェンニュース発行人
今回、どんな理由で「テロ」が必要とされたのかは、ウマーロフなり、ロシア政府、情報機関なりの都合なので、私にはわからない。おそらくこれからも真相はあきらかにならないのだろう。だいたい、十分な捜査もせずにうやむやになっている。しかし、今回の事件の知らせが、「チェチェン側が犯行声明」という見出しで世界中に流れたことは、いつもどおりの効果がある。
最初の表でチェチェンがらみの「テロ」で殺された人の数は、単純に合計して952人になる。しかし、1994年からのロシアの対チェチェン軍事侵攻で殺されてきた人の数は20万人にのぼる。なんと、210対1の開きがある。テロに賛成はできないにしても、チェチェンであれだけの不正義が放置されていれば、チェチェン以外の場所でテロ事件が起こっても、不思議ではない。チェチェンで殺されてきた人々のことは報道せず、ただチェチェンがからんでいる「らしい」程度でこの騒ぎ。こうして「チェチェン=テロ民族」というイメージが広められてきた。どうしてメディアは、公平な報道をしないのだろうか。
私は、鉄道を爆破することには反対だし、人殺しは悪いに決まっていると思いたい。しかし、それならチェチェン難民の車列がロシアの軍用機に機銃掃射されたことにも、反対していなければいけないはずだ。メディアは伝えてきたろうか。それどころか、忘れられていないだろうか。もういちど最初のリストに戻ろう。ロシアに従順だったアフメド・カディロフが殺されたのが「テロ」なのに、チェチェンの穏健派政治家マスハドフがロシア政府に殺されたのは、テロではないようだ。権力の側に殺されたナターリヤ・エステミローワや、アンナ・ポリコフスカヤの死は、なぜカウントされなかったのだろう。
毎日新聞をはじめ、今回の事件について、各紙の記事は慎重な書き方をしていると感じた。だから、ある枠組みのなかでは良心的な記事だと思う。しかし、こういうリストからわかるのは、残念ながら、無意識のうちに、最初から枠組みが決まっていることだ。テロは常にチェチェンがすることで、チェチェンへの弾圧は、治安のためのやむを得ない行動だから、「テロ」のリストには入らないというように。私たちは誰でも、慎重に考えていきさえすれば、きっと「公正さ」にたどり着けると思う。姿の見えない敵を憎むより前に、私たち自身のものの見方を研ぎ澄まさなくてはならず──あとは、プロフェッショナルの良識に期待するしかない。(おわり)
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