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2009-11-27 00:00
日米同盟の深化・発展のために
湯下 博之
杏林大学客員教授
オバマ米国大統領のアジア訪問が終わった。その評価は、立場により分かれる面もあろうが、総じて、極めて意義深い歴訪であったと思う。先ず、米国を「太平洋国家」と位置づけて、アジアへの関与の姿勢を強く印象づけたことは、近年の米国の外交政策の流れの中で、歴史的な出来事であったと言えよう。
日本を最初に訪れ、日本でアジア政策に関する演説を行う等、日本への配慮が行き届いていたことも印象的であった。中国との関係について、戦略的信頼をはぐくんで、現実的な協力を追求するという方向性が明確になされたことも、今後のアジアにとって重要なことであった。
今回の訪問はスタートであり、具体的な問題は、今回の成果を踏まえての今後のフォローアップによることとなるが、日米関係について見れば、「日米同盟」の深化、発展をどのように現実に、具体的な形で、実現するかが、最重要な課題と言えよう。来年の日米安保条約改定50周年に向けて、冷戦後大きく変化した世界情勢に合わせて、日米の同盟関係をしっかりとした形で再構築することが当面の重要課題であろう。ところで、日米同盟については、先ず日本国内で早急に議論を進め、頭の整理をする必要があり、そのことを政治家や識者の方々に強く望みたい。
第一に、「同盟」という語は、本来、第三国からの攻撃に対して共同で防御するための国家間の結合のことであるが、「日米同盟」は必ずしもこの定義には一致しない。何故なら、日米同盟の基礎をなす日米安保条約は、日本の防衛に加えて、極東の平和と安全のためのものであり、他方、米国の防衛は対象に含まれていない。更に、日米同盟は、全世界をも念頭においているが、これは日米安保条約に基く法的関係を超えた政治的なものである。このことをはっきり認識してかからないと、議論の混乱を招く。
日米同盟の基盤である日米安保条約そのものについても、日本にとっての安全保障上及び国際政治上の重要性を整理し、再確認することが大切である。更に、有事におけるオペレーションをめぐる問題を含め、その実効性の確保についての検討が必要である。在日米軍の再編は、グローバルな米軍再編と結びついており、後者についての議論をせずに、基地所在地の問題の如くに扱う取り組み方では、妥当な解決が得難いと思われる。日本の防衛を超えた地域的或いは世界的な問題への取り組みは、冷戦後に生じた新しい問題である。多極化の時代となり、アジアでも中国やASEAN等が発言力や役割を増やしている時に、日本はどのような役割を果たすべきか。米国の言うことに合わせるというのではなく、言うべきことは言って、米国(更には国際社会)とどのように協力して役割を果たすかという問題である。アジアで取り残されないためにも、真剣な議論が必要である。
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