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2009-11-26 00:00
「イスラム原理主義は=過激派」ではない
石川 純一
フリージャーナリスト
1989年のベルリンの壁崩壊で、第1次大戦後その特徴を明確化したファシズム、共産主義、民主・自由主義の3つのイデオロギーの戦いに終止符が打たれたことは、前回述べた。「20世紀型紛争」に代わり、米国の主導する「テロとの戦い」に象徴される「21世紀型紛争」が、遙かな地平からむくむくと頭をもたげ始めた。ベルリンの壁崩壊に先立つこと10年のイラン革命(1979年)がその端緒である。
イスラム原理主義を「一部のイスラム信者の唱える戯言」と切って捨てる見方がある。中国、要するに中華人民共和国を筆頭とする中国圏への対処の方がよほど大事だという考え方だ。しかし、これは偏狭な考え方だと筆者は思う。世界3大宗教の1つの中に根ざしてるイスラム原理主義に対しては、それ相応の敬意を払って応ずべきである。少なくとも、それは犯罪者の温床と同列というわけにはいかない。国連などのデータに基づいたバチカンの最新統計年鑑によると、2006年度の世界のイスラム教徒人口がカトリック教徒人口を抜いた。バチカンの機関紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」が2008年3月30日に報じた。
発表された統計によると、06年の世界人口65億人のうち、イスラム教徒は19%以上。対するカトリック教徒は17.4%を占めた。ただしカトリック、ギリシャ正教なと東方教会、英国教会、プロテスタントなども含めたキリスト教全体で見ると、キリスト教徒は「世界人口の3人に1人」という割合になり、イスラム教徒の人口を上回る。イスラム圏とは、イスラム教とそれを信仰・実践する人々であるムスリム(イスラム教徒)が社会の中心に立って活動する地域を指し、イスラム法(シャリア)の用語に言うダール・アッサラーム(「イスラムの家」)とほぼ等しい概念を意味する語である。
イスラム圏の中には、法としてシャリアを用いない国も少なくない。トルコやアルバニアなどイスラム教徒が大多数を占める国であっても、世俗主義を標榜し、シャリアを用いてはいない。問題は、イスラム原理主義が、国際テロ組織アルカイダに象徴されるイスラム過激派と同列視されることだ。実際には、一般にイスラム原理主義として評価されることの多いワッハーブ主義を国是とするサウジが、穏健派の親米アラブ国家の代表格であるように、現実の政治の場では「イスラム原理主義=過激派」と単純にとらえることはできない。
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