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2009-11-15 00:00
サウジ戦闘機のイェーメン領域攻撃
茂田 宏
元在イスラエル大使
11月6日付ロスアンジェルス・タイムズ紙は、「サウジ戦闘機、イェーメンの叛徒を攻撃」との見出しの記事を掲げ、つぎのように報じている。
サウジの軍用機が北イェーメンのシーア派叛徒根拠地を11月5日空爆した。サウジ軍は、イェーメンとその山岳で6か所の叛徒の拠点を攻撃し、軍が叛徒勢力による越境攻撃を防止するために侵攻している。サウジの政府顧問は「いくつかの空爆、かなりの砲撃が、国境地帯だけではなく、北部の都市サーダの叛徒根拠地に加えられた」とロイターに述べた。イェーメン政府は何の声明も出さず、アルジャジーラに「サウジはイェーメン内の目標を攻撃していない」と述べた。イェーメンはアルカイダ員を惹きつけており、サウジはイェーメンの不安定を利用して、アルカイダがサウジに侵入し、政府機関や石油施設を攻撃することを恐れている。少なくとも40名の叛徒がサウジの空爆で死んだとされている。その前に叛徒がサウジに越境攻撃をかけ、ジェベル・ドゥカン近くで治安部隊員1名を殺害、11名を負傷させた。イェーメン北部には政府の統治が及んでいない。8月にイェーメン政府は叛徒に対し「焦土作戦」を始めた。数万の避難民が出たが、政府は報道管制をしている。叛徒グループはシーア派で、イランの支援を得ているとされる。
このサウジの行動がサウジとイェーメンの両国家の対決になる可能性は今のところ小さい。双方で共同で対テロ対策をしている形になるのが理想である。アルカイダがソマリアとイェーメンでの活動を強化している。両国とも、正式な政府はテロに反対であるが、その領域内には、アルカイダに同情的な勢力、すなわちソマリアでのアル・シャバーブとイェーメンでのホウチ(またはフーシーと発音)叛徒グループ、が支配するかなり大きな地域がある。両国とも破綻国家と言ってよい。米国内では、対米テロ脅威としては、ソマリア、イェーメンはアフガンと同じような脅威であるとの議論がある。この議論は正しいが、米国としてソマリアやイェーメンの状況にアフガン並みの対処をする余裕はないだろう。
アフガンとソマリア・イェーメンの間に違いはあるのか。シンボリックな意味の違いがあると思われる。アフガンでは、既に米国やNATOなどが戦争をしている。そこからの撤退は米国などにとって「敗北」になり、イスラム過激派を元気づける。ソマリア・イェーメンにはそういう状況はない。アメリカの自衛権行使であったアフガン戦争が、テロ対策から国造りにまでなっていった過程は、諸事情に流された面も否定できない。その時々の事情に対応していて、そういうことになった。物事を行う際は、当初の目的を常に念頭に置き、その修正は最小限にとどめることが、成功につながるように思われる。
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