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2009-10-23 00:00
日米関係を脅かす「普天間危機」
杉浦正章
政治評論家
普天間飛行場移設問題で日米関係が異常なる緊迫感につつまれている。米国防長官・ゲーツと首相・鳩山由紀夫、外相・岡田克也の会談は事実上の物別れだったことが、次第に鮮明化してきている。大統領来日までの決断を迫る米側と先延ばしをする日本側との対立は、激化の方向にある。米側からは警告とも取れる高官発言が相次いでいるが、鳩山政権はまるでことの重大性を理解せず、野党時代の与党との条件闘争に入ったような趣だ。首相以下切迫した米側からのメッセージを意に介する様子はなく、意固地なばかりの先送り姿勢だ。この危機感のなさはどこに由来しているのだろうか。内政でも国民合意のないままのマニフェスト至上主義が目立つが、基本は政権が総選挙で国民から「外交・安保」を白紙委任されたと誤解しているところにある。
日米関係の現状を最もよく形容しているのが、ワシントンポスト紙電子版の報道だ。22日付で報じるところによると、「日本外交の新傾向を懸念する米政府は、米軍再編の約束を破るなら重大な結果を招くと日本政府に警告した」という。さらに国務省高官は「もはや現段階における最大の困難は、中国ではなく日本だ」とも強調した。米政府が予想を超える日本側の対応に、これは確信犯的だと“身構え”たことを物語っている。普天間移転の断念は、米国にとって極東における安保戦略・米軍再編の挫折にほかならない。反米または脱米入亜と受け取れる鳩山論文や首相就任後の発言について、米政府はこれまで「政策決定の仕組みが動き出すまでの数か月間、我々は辛抱しなければならない」(米国務次官補・カート・キャンベル)との対応だった。大統領訪日までの方向転換が可能であると受け止めていたのであろう。ところがゲーツ来日で米側が得た反応は、事実上大統領訪日までの決着拒否であった。「日米同盟は基軸」と、お題目のように唱えながら、その証である普天間合意を覆そうとする日本政府の態度がいよいよ鮮明になったのである。
こうした政府の方針の根底に何があるかというと、総選挙の圧勝だ。岡田がいみじくも「米側は約束、約束と言うが、選挙でいまの状況になった。約束したからこのままとはならない」と発言している。しかしこの発言には重大な問題のすり替えがある。民主党はマニフェストでは在日米軍再編について「見直しの方向で臨む」と明記したものの、普天間飛行場の移設問題への言及はない。あえてあいまいなまま選挙に臨んだのである。だいいちそのマニフェストですら鳩山がいったんは「時間によって変化する可能性は否定しない」と事実上のほごを宣言したではないか。あいまいなままのマニフェストで選挙しておいて、選挙圧勝を水戸黄門の印籠のように振りかざし、日米合意不履行の理由とするのは、原理主義者岡田の詭弁(きべん)にすぎない。鳩山は移転先となる代替地を検討の視野に入れているようだが、県内の新候補地はいずれも自公政権が検討したものの結局断念した場所ばかりであり、無駄な時間延ばしとしか考えられない。
ゲーツも防衛相・北沢俊美に「他の代替案はない」と明言している。引き延ばしのような、またその場逃れのような対応を、首相たるものがなすべきではない。この問題が行き詰まった背景には鳩山の優柔不断さが根底にある。やはりリーダーシップを発揮できていないのである。また就任以来の発言を見ても、外交・安保の基本的な識見に欠けるとしか思えない。鳩山は「米国にとってアフガニスタン・パキスタン支援の方がはるかに大きなテーマ」と述べ、アフガニスタン支援策で普天間の米側譲歩を得られるという見方を示しているが、ピントを大きく外している。このアフガン・普天間セット構想はもともと岡田が内部で言い出したものだが、ゲーツからも一蹴されている。社民党や旧社会党系議員のイデオロギー的な反米主義に踊らされている側面も垣間見られる。いずれにせよ日米両国の安保問題での亀裂は、中国・北朝鮮にとって“カモの味”であり、鳩山は“友愛の海”では解決できないことを認識すべきだ。長年培ってきた日米の信頼関係に深い亀裂をもたらし、北東アジアの安全保障にも大きな影響をもたらす普天間移転という日米間最大の課題を、政権の独断で方向転換するつもりなら、この問題だけをテーマに改めて国民の信を問うべきではないか。
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