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2009-10-06 00:00
中国建国60周年に際しての軍事パレード
茂田 宏
元在イスラエル大使
10月1日、中国は建国60周年を盛大に祝賀したが、そのハイライトは中国の軍事力を誇示する軍事パレードであった。中国は着々と富国強兵路線をすすめている。人民網によると、上海の復旦大学のマスメディア・民意調査センターが行った上海市民調査では、最も印象深かったのは「胡錦涛主席による閲兵」、「軍事パレード」、「山車、市民パレード」の3つであるが、軍事パレードは「民族の誇りと結束を高めた」として、その隊列が「中国人民解放軍が偉大な武力であることを示すもの」と称賛されている。軍事パレードでは14の徒歩隊列、30の装備隊列、12の航空編隊が参加した。99式戦車、歩兵戦闘車、早期警戒管制機(AWACS)(空警2000)、空中給油機、戦闘機「殲10」および「殲11」、弾道弾ミサイル東風31Aなどが展示された。中国軍は近代的な軍隊に変貌したことが誇示されたといえる。人海戦術の人民解放軍はどこかに行ってしまったということである。今回は当然のことながら海軍力は展示されていないが、海軍も目覚ましく近代化されている。
今年の夏、私は友人とともにペンタゴン報告書『中華人民共和国の軍事力2009年版』を翻訳・出版したが(アマゾンなどで販売中)、そこでは東風31Aは10基以下とされているが、新華社の写真では12基がパレードに参加している。ペンタゴンはすこし過小評価しているのではないかと思われる。またこれらの兵器はほとんどすべて国産であるとされ、中国の軍事技術は外国の技術に頼らないものになってきている。10月1日付『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙は、「海軍と空軍のために資源を放出するために、陸軍は縮小されるかもしれない」との記事を掲載している。その記事によると、北京はここ2-3年で、陸軍で70万の人員削減を行い、海軍、空軍の増強に資源を振り向ける予定であるとしている。そうなれば、近代化がますます加速化されるだろう。
10月1日付『台湾ニュース』紙は「米高官:台湾は中国に対する防衛を適応させなければならない」との記事を掲載、ペンタゴンのグレグソン次官補(アジア・太平洋担当)が、米・台湾ビジネス・カウンセルで9月30日に次のような演説をしたことを報じている。「台湾は今後、量的な有利性に依存する贅沢は許されない。台湾は中華人民共和国を軍事費で追い抜くことはできない。その代わりに台湾は創意工夫と非対称性に焦点を合わせ、質的な優位を求めるべきである。台湾は、志願兵を活用できる将校団を発展させる必要がある。より操縦性のある兵器の配備と偽計とカモフラージュが、台湾の防衛力を攻撃する中国の能力を限定し得る」と。これは中台軍事バランスがどうしようもなく中国有利になったことを認めた上での発言である。
中国の軍事力の増強の問題は、透明性の欠如も問題であるが、それ以上に東アジアの軍事バランスに大きな影響を与えているということにある。台湾にとってと同様、日本としてもこれをよく認識して物事を考える必要がある。東アジア共同体という将来の話だけして、こういう現実を見ない考え方は、地に足がついていない考え方であり、そこには危うさがある。
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