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2009-09-30 00:00
中国の瀋陽フォーラム等に参加して
池尾 愛子
早稲田大学教授
9月12-16日に、久しぶりに中国に出張し、天津と瀋陽を訪問してきた。1年4ヶ月のあいだアメリカで在外研究に携わってきた後、その研究成果の一部とはいえ中国で最初に発表することになるというのは時代の流れであろうか。正直なところ、かなり神経質になり、9月2日にアジア経済研究所の国際シンポジウム「日中韓FTA共同研究」、11日の午前だけであるが、グローバル・フォーラムとASEAN戦略国際問題研究所連合が共催する第8回日・ASEAN対話「金融・経済危機における日・ASEAN協力」に出席し、日本での「空気」に浸るなどしてできる限りの準備はした。東アジア地域では、金融危機それ自体よりも、それから引き起こされた経済不況の影響のほうが大きいことも再確認した。私が研究発表・講演した論題は「アメリカ発の金融危機とその対策に向けて」で、本政策掲示板に発表してきたものを材料の如く大いに活用した内容であり、論文原稿にもその旨とグローバル・フォーラムのURLを明記した。
天津では、南開大学日本研究主催の日中韓シンポジウム「グローバル化における東アジアの制度変革」(国際交流基金助成)に参加した。同研究院のシンポジウムへの参加は3年ぶりであった。3年前とは異なり、ずいぶんリラックスして学術交流ができたという印象をもった。中国政府により「デリバティブと金融規制」が2年ほど前から重要な研究課題に指定されているというのも、正に時宜を得ていて興味深かった。「リーマン・ブラザーズは破綻させるべきではなかった」と言い切る上海の経済学者もいて、金融問題への関心の高さがうかがえた。天津市の大通の建物の概観が綺麗にペイントされ、オリンピックの前と後の相違を感じた。市街を流れる川をまるでセーヌ川に見立てるような街づくりになっているという印象を受けていると、川にかかった橋の名は「フランス橋」であると聞かされた。1年ほど前に完成したという天津駅のモダンさに感動し、天津から瀋陽まで5時間弱の鉄道の旅を時刻表どおりに体験することになった。
瀋陽では、遼寧省政府・瀋陽市政府共同主催「2009年北東アジア発展フォーラム」(於遼寧大学)の分科会「国際金融危機と東アジアにおける経済協力の戦略」(2日間のうち2日目のみ)に参加した。同席した講演者は、中国国際問題研究所 世界経済と発展部の姜趺春(Jiang Yuechun)主任、中国商務部 国際貿易経済合作研究院の徐長文(Xu Changwen)主任、中国国務院 発展研究中心 金融研究所の巴曙松(Ba Shusong)副所長、中国人民大学 経済学院の黄泰岩(Huang Taiyan)教授、遼寧大学 経済学院国際金融研究所の白歓先(Bai Qinxian)所長、南ミズーリ州立大学のパーク教授(韓国出身)、司会者は程佛(Cheng Wei)遼寧大学学長であった。中国の方々の発表はどちらかといえば、各個人の研究に基く発表というよりも、各所属研究機関を代表するような発表であるとの印象を受けた。パーク教授の講演「アメリカの金融危機:原因、影響、対策」と私の講演内容は密接に補完しあい、大変興味深かった。先に講演した私に対して「よい講演でした」との感想をパーク教授からいただき、アメリカにいなければわかりにくい情報を満載した私の発表が「検証」されたと感じて心強く思った。パーク教授は、CDOやCDSなど金融デリバティブの説明を詳細に行われ、彼が金融(ファイナンス)と経済学の専門家であることがうかがえた。彼はフルブライト・スカラーとして、大連の大学に、9月から1年間、滞在される予定であると伺い、これまた大変興味深く感じたのであった。
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