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2009-09-30 00:00
国際社会での日本の将来像を持とう
湯下 博之
杏林大学客員教授
鳩山新政権が発足した。日本の政治にとって歴史的な出来事として広く内外の注目を集めると共に、種々の期待や懸念が表明されている。外交の分野でも、アジアとの関係について期待が寄せられる一方、対米関係について強い懸念が表明された。特に対米関係では、インド洋での給油問題等の具体的な問題が、焦眉の課題となっている。これらの具体的な問題については、外交の一貫性を維持しつつ、長期的、複眼的視点に立って処理することが大切である。
しかし、同時に、そもそも日本はどのような国として存在し、どのように行動することが、日本の安全と繁栄のために望ましいかということについて、しっかりした考えを持つことが大切であり、その考えに基づいて判断や行動をすることが必要である。このことは、冷戦が終結し、米国の一極時代を経て国際社会が多極化世界へと変化している今日、決定的に重要であるが、自民党政権が続いている間は、真剣に考えるモメンタムを見つけにくかったように思う。今回の歴史的な政権交代は、この問題を考える好機であり、この機会に、是非、この問題についての真剣かつ建設的な議論を巻き起こしたいものである。
国際社会における日本の位置づけやとるべき行動について考えるに当たっては、(1)日本がなすことが適当な国際貢献、(2)国際平和の維持の面で日本のなすべきこと、(3)日本が世界に向けて発信すべき価値観や経験、(4)アジアとの共生・アジアの発展への取り組み、(5)日米同盟・日米関係の重要性の再認識と米国とのかかわり方の検討、(6)中国との関係への取り組み、の6点が柱になると思う。これらの諸点のうち(1)から(4)までは、既に本欄において、少なくとも部分的には論じたので(昨年12月27日付け投稿「世界的危機の真の解決に日本は貢献できる」、本年1月30日付け投稿「求められる『征服』から『調和』へ」、3月27日付け投稿「東南アジア諸国との『共生』を目ざせ」、4月24日付け投稿「国際貢献についての日本の立場を再考しよう」、6月26日付け投稿「新しい平和主義を国是に」など)、字数の関係で今回は内容に入ることをやめ、(5)と(6)について簡単にふれたい。
国際社会が多様化しつつあると言っても、米国は軍事力、経済力で突出しており、かつ、日本は安全保障面で米国に依存せざるを得ない。したがって、米国との良好かつ緊密な関係を維持することは不可欠である。しかし、米国が誤った選択をすることもあるし、国際社会の枠組みを必要とすることもある。米国との関係が真に有意義なものであり続けるためには、米国とどのような関わり方をするのがよいのか真剣に深く考えて、基本政策を持つことが大切である。中国との関係について、日本には対中脅威論や対中警戒論はあっても、中国との関係をどのようなものにすることが望ましく、そのためにはどうすべきかについての議論は少く、ましてや政策についてのコンセンサスはない。少くとも、米国と協力して、中国が責任ある大国になるように仕向け、日中が協調してアジアの発展を図るべきである。
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