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2009-09-29 00:00
筆者スクープ:鳩山自身が返済猶予法案推進を明言していた
杉浦正章
政治評論家
首相・鳩山由紀夫自身が亀井発言で金融界に衝撃を起こしている中小企業の債務の返済猶予(モラトリアム)を法案化し、「政権を取ったらすぐに日の目を見るようにする」と選挙中に鹿児島市での街頭演説で明言していたことが、9月29日明らかになった。モラトリアムは金融・郵政改革相・亀井静香の構想とみられてきたが、首相自身が法案の臨時国会提出を明言していたことにより、連立政権のトップ同士の密約であった可能性が鮮明になった。閣内にも慎重論が強い同問題を、首相自身が推進を公約していたことは、金融業界に強い衝撃をもたらすことは避けられない。発足早々の内閣に打撃となることは必至だ。報道機関の読者は、部下に早期取材を命じた方がよい。
鳩山が7月28日鹿児島市内における衆院議員・川内博史の応援演説で発言したもので、その動画が川内の公式ホームページ(http://www2c.biglobe.ne.jp/~kawauchi/)に掲載されている。筆者は、ウエブを検索して、偶然発見した。筆者の記事が出て、サイトから消される可能性があるから要注意だ。首相はこの中で中小企業支援策として、まず「景気が厳しいときに元本の返済はなかなか難しいが、利子の部分だけ返済することなら出来る」と表明するとともに、「中小企業の方々の元本返済をしばらくの間猶予していただけるような法案も検討していきたいと考えている」と、「中小企業元本返済猶予法案」の国会提出を明言。ついで今後の段取りとして、「政権を取ったら、すぐに日の目をみるように努力をしたいと思うので、よろしくお願いしたい」と、亀井の構想通り秋の臨時国会への提出を明らかにしている。亀井構想は3年程度のモラトリアム実施だ。
しかし、返済猶予の法案化には、官房長官・平野博文や財務相・藤井裕久が慎重論を唱えるなど、政府・与党内に批判が広がっている。亀井自身は、首相とモラトリアムの関係について、27日のテレビ朝日の番組で内閣に慎重論が多いことを指摘されて、「反対なら鳩山さんが私を更迭すればいい。できっこない。選挙の前から合意している話だ」と謎のような発言をしている。その真意が、鳩山発言によって首相と亀井の間の“モラトリアム密約”を指す可能性が濃厚となったのだ。鳩山は応援演説で、モラトリアムは「川内候補のアイデアであり、私も借用させていただく」とも述べている。川内自身は既に「中小企業元本返済猶予法」構想をまとめている。その内容は、(1)まずは2年間、必要があればそれ以上元本返済を猶予する、(2)その分金融機関には日銀から無利子貸与する、(3)条件変更どおり利息が支払われている限り、不良債権に分類しない、となっている。亀井も川内の応援に行っており、鳩山、川内、亀井はモラトリアムでつながっていることが分かる。鳩山は28日、首相官邸で記者団に対し、「モラトリアムということまで合意しているわけではない」と述べ、3党の政策合意に含まれていないとの立場を明らかにしたが、亀井との2党密約の形で合意が存在していたことは確定的だ。ことの重大さがようやく分かって、トーンダウンしたのだ。しかしモラトリアムが持論であることをひた隠しにするのは、情報公開を明言している政権の隠ぺい体質の表れであり、大きな問題として残る。
モラトリアムについては、返済猶予がモラルハザード(倫理の欠如)を招くことが必至とみられており、国内では関東大震災直後と昭和初期の金融恐慌のさい、3週間の返済猶予を認めた歴史はあるものの、長期にわたる例はない。憲法違反とする学説もある。「財産権は、これを侵してはならない」とする憲法第29条の趣旨に違反するとする説だ。法案を作っても、憲法違反で内閣法制局で止まるという学者もいる。同法制局がストップをかけるような法案を、時の政権が作成すれば、政権の基盤を揺るがす事態に発展しかねない。金融業界も反対で固まっており、「首相・亀井密約」が大きな問題に発展する可能性は高い。28日急きょ「政府・連立与党首脳会議」が設置されたことのいぶかしさが指摘されているが、幹事長・小沢一郎も出席する場を作り、亀井のモラトリアム独走をけん制する意味合いが濃厚とみるべきだろう。
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